申し入れ等
2014年6月30日

 「竹島絵本」読み聞かせ授業についての申し入れ

2014年6月30日

横浜市教育長 岡田 優子 様

日本共産党横浜市会議員団
団長   大貫 憲夫

横浜市教育委員会は、竹島を扱った絵本の作者による読み聞かせを実施するとして学校を選定し、6月20日、鶴見区の小学校1校の6年生と青葉区の小学校1校の4年生に、国語の読書活動の授業の一環として実施しました。市教委の説明によれば、5月中旬に、自民党の横山正人市会議員から、絵本「メチのいた島」の作者の杉原由美子さんが横浜に来るので、小学校で読み聞かせをしたいと要請があったとのことです。
絵本「メチのいた島」は、メチ(ニホンイルカ)が生息する恵み豊かな島である、竹島での漁猟の様子等を描いたものです。絵本の後半に「ところがそんな豊かな恵みの島 竹島に近寄ることもできなくなりました」「竹島はむかしから日本固有の領土でした」「竹島はいまも日本固有の領土です」とあり、そして「波の向こうで 日本の竹島が今日も私たちを待っています」と結び、子どもたちの感情に訴えています。
今回、国語の授業でこの絵本の読み聞かせを行ったことは、結果的に、竹島についての領土教育が行われたことになります。このこと自体が問題です。
問題の第一は、現行の小学校学習指導要領にないことを行ったことです。本市の小学校の教育は、学習指導要領にしたがって行われています。同要領では、日本の領土については小学5年生で北方領土だけ学ぶことになっており、竹島については中学校の地理と公民で扱うとされています。今回の読み聞かせはこれに反しています。
学校教育は基本的な知識を学ぶ場です。領土問題に関しては、基本的知識と、武力ではなく平和的解決の大切さを、子どもの発達段階に応じて教えることが大事です。領土問題は、個々の経過が複雑なだけに、限られた時間でどう教えるかは、教員や教育関係者の意見をよく踏まえて検討し、かつ教育の自主性を大切にする必要があります。
竹島の日本への領土編入には、歴史的根拠と国際法的根拠があります。しかし、日本が竹島を編入した時期は、日本が韓国を植民地にしていった時期と重なり、韓国は外交権を奪われ、異議を唱えることができませんでした。こうした歴史的経過を踏まえ、竹島の領土問題は韓国併合への反省の上で、冷静な外交交渉によって解決していくことが求められます。この視点が欠落した領土教育は間違いです。
問題の第二は、子どもたちへの悪影響が心配されることです。竹島の歴史的経過について学習しないまま、作家による絵本の読み聞かせだけを行うことは、近寄れないのは韓国のせいだ、韓国は許せないという感情をもたらすだけです。他国を尊重し国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うことを教育の目標としている教育基本法からみて、授業としてはあってはならないことです。
6年生が中学校にあがって学ぶ歴史教科書は、育鵬社版です。同書は、日本の植民地支配で朝鮮は大いに発展したとのデータを掲載しています。子どもへの誤った韓国観が増すことが憂慮されます。このことを市教委は直視すべきです。
横浜市は、多文化共生を掲げ、今年は日中韓の文化交流として東アジア文化都市事業を行っています。市内でも特に韓国につながる子どもが多い鶴見区の小学校が選定されたことは、反韓国感情によるいじめや不登校などの懸念が大いにあったはずであり、教育委員会は子どもの発達段階や国際問題に対する配慮が完全に欠落していたと言わざるを得ません。
自民党議員からの要請を受けて、教育委員会が学校での実施を判断するにあたり、子どもへの否定的影響を招く領土教育となることは当然予測できたはずです。この間の領土教育の徹底を求める自民党の主張に照らしてみれば、自民党議員の意図は汲み取れていたはずです。これでは、子どもより市会議員の意向を優先させたものと言わざるを得ません。また、自民党議員だけが授業を参観した点と教室の後列ではなく前方に座ったことも異例です。
このように、子どもへの配慮がなく読み聞かせが実施されたことについては、子どもが抱いた一方的見方を是正する措置を求めるとともに、二度とこのような政治介入に屈して、子どもたちの利益を損なうことのないよう、市教委として毅然とした態度を貫かれるよう、強く申し入れるものです。


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