- 日本共産党 横浜市会議員団 - http://www.jcp-yokohama.com -

■「議案関連質問」 白井まさ子議員(2014.9.3)

白井議員:私は、日本共産党を代表して、9件の議案について市長に質問します。
まず、市役所の位置条例関連についてです。港町から北仲通南地区への位置変更条例は 議会出席議員の3分の2の賛成を要する特別多数議決であり、慎重審議が求められています。わが党は、7月に新市庁舎整備についてシンポジウムを開催し市民意見を聞き、また、全市規模の市民アンケートを行い意見も集約しています。その上で、多々ある問題点について質問します。

新市庁舎の土地は裁判中、計画白紙もありうるが

初めに、位置変更先の土地についてです。
2008年3月の本市とUR都市機構との土地譲渡契約の無効性を、かながわ市民オンブズマンが提訴し、横浜地裁で裁判中です。本市が168億円で購入した当該土地は再開発ビルすなわち超高層ビルの建築を義務付けられており、そのために将来、600億円超の巨額の支払いを余儀なくされます。しかし、この土地での建築の予算上の債務負担行為については、議会の議決を経ていません。そのため、契約は無効という訴えです。仮に司法が契約無効とすれば、当該土地に特定建築者として、再開発ビル建築の義務はなくなります。現在の新市庁舎建設計画は白紙に戻ることになります。
現在、係争中の土地に、現時点で市役所の位置を確定することは、大問題です。条例改定を提案すべきではないと考えますが、見解を伺います。

林市長:白井議員のご質問にお答え申し上げます。
市第46号議案および市第58号議案について、ご質問いただきました。
市の事務所の位置に関する条例の一部改正の議案提出についてですが、新市庁舎の整備予定地は、平成7年に横浜市市庁舎整備審議会からの答申を受けて以来、検討を重ね、平成24年度の新市庁舎に関する調査特別委員会での議論を経て、北仲通南地区と位置付けた経緯があります。従って、住民訴訟については承知をしておりますが、本事業を着実に進めるために、この時期に提案させていただきました。

建築コストが安いのは現市庁舎の港町案

白井議員:次に、この土地にこだわらなければ、現市庁舎の議会棟の敷地を使って現市庁舎に増築する方式を選択することができるということです。この港町の当局案の事業費は約400億円です。URとの契約解除となれば、土地取得費168億円の相当部分が戻ることになります。正味の建設費用は、現行計画の3分の1に縮減できます。建築コスト論から言えばこれがベストです。前市長による北仲通南地区既定路線の踏襲ではなく、あらゆる可能性を探って、このベストの道を選択すべきです。
過大な負担を強いられる現計画の前提条件となる位置条例の提案は撤回し、今からでもURと交渉し、建築コスト低減の港町案の実現に努めるべきと考えますが、伺います。

林市長:建築コスト低減についてですが、新市庁舎の整備案については、平成24年度に新市庁舎整備基本構想を策定するにあたり、港町地区での整備案と北仲通南地区での整備案を、庁舎分散化の解消や事業期間、収支シミュレーションなどの観点から比較検討し、北仲通南地区を整備予定地と位置付けました。

資材費高騰・人件費上昇などでインフレスライド条項の適用は

白井議員:次に、市長の判断で、新市庁舎の完成時期を2年前倒しし、2020年の東京オリンピック開催に間に合わせることになりました。アベノミクスと東京オリンピック決定によって、首都圏はいま、大型工事建設ラッシュです。オリンピックに向けて、22の競技施設の整備、選手村や首都高などの改修もあります。当然、人件費や、資材費は今以上に上昇します。同じ時期に本市が新市庁舎を建設するとなれば、建築コストの上昇は必至です。
本市は、資材費や人件費上昇による工事への影響を最小限にするため、設計・施工一括発注で早期に事業費を固めるとしていますが、横浜市契約規則、工事請負契約約款では、インフレスライド条項により1000分の15を超えるコストアップがあれば、上乗せ義務規定があります。このルールがある限り、事業費はアップせざるをえないと思いますが、この案件にはインフレスライド条項は適用されないのでしょうか。市長の明確な回答をお願いします。

林市長:事業費については、具体的に設計要件等を整理する中で、ライフサイクルコストを踏まえ、経済性、効率性に優れた建物および設備となるよう、さらに精査をします。
発注方式と事業費についてですが、設計・施工一括発注方式には、設計作業と平行して具体的な施工計画の変更が可能であり、鉄骨工事などの専門工事業者との発注確約ができるなどのメリットがあります。なお、事業費については設計・施工一括発注方式といえども、物価などが変動し、工事請負代金額が不適当となった場合には、契約金額を変更する必要があると考えています。

3・11被災者の復興を妨げてまで東京五輪に間に合わせるのか

白井議員:また、3.11東日本大震災被災地の復興は当初予算の未消化に見るように大きく遅れています。復興庁によると2013年度復興予算の執行率は64%、使い残しは2.6兆円です。事業の未着手や遅れの原因の大きなものとして、人手不足と資材高を上げています。オリンピックに向けての本格工事がまだ始まっていないいまでも、この有様です。被災県の復興住宅建設の大幅な遅れは今や、仮設住宅の高齢者にとって命に係わる重大問題です。
今後、オリンピック関連工事の本格化によって、首都圏にますます人、ものが集まってきます。被災地がその分、犠牲となってしまいます。本市は、新市庁舎だけでなく、高速環状道路北西線も同様に前倒しです。復興の足を引っ張る側に回っていいはずがありません。なぜ、オリンピックに間に合わせるのでしょうか。新市庁舎は観光施設でもなければ迎賓館でもありません。オリンピックに間に合わせる理由は皆無です。横浜さえよければ復興など、どうでもいいのでしょうか。
被災地の復興を妨げることに市長の心が痛むのであれば、事業スケジュールはもとより、事業費も含め、計画の抜本的見直しを強く求めます。どうでしょうか。

林市長:新市庁舎整備計画についてですが、新市庁舎についてはもともと2020年オリンピック・パラリンピック東京大会開催の有無に関わらず、現市庁舎のかかえる市庁舎の分散化や年間20億円を超える賃借料負担の解消、危機管理機能の強化などの課題を解決するために早期に整備する必要があると考え、検討を進めてきました。
資材の高騰などの懸念や東日本大震災に伴う復興事情についても承知していますが、現市庁舎のかかえる課題は本市にとって喫緊の課題であり、事業を着実に進める必要があると考えています。

子ども・子育て支援新制度で保育の質の低下が懸念

白井議員:次に、子ども・子育て支援新制度関係の7件の議案についてです。
新制度は、様々な問題点を抱え、その上、来年4月実施ということで、現場に混乱と不安をもたらしています。わが党は新制度の撤回を求めていますが、実施にあたっては、実施主体である自治体の判断や裁量権を大いに発揮して、子どもの権利保障の立場から、保育の格差是正と保育水準の引き上げを求めるものです。そこで順次質問します。
国は、新制度で新たな参入を促すために設備や運営の規制を緩和します。本市の今回提案の条例では、国基準同様に4階以上に認可保育所、小規模保育所、事業内保育を設置する場合に、屋外避難階段がなくてよいことになります。火災などを想定した場合に、これまで通り避難用外階段は必置と考えますが、見解を伺います。

林市長:子ども・子育て支援新制度関連の条例の制定等関連議案についてご質問をいただきました。
4階以上に保育室がある場合の屋外階段の設置についてですが、今回の設置要件の見直しは、国の検討会において建築・消防の有識者による議論を経て、屋外避難階段と同等の安全性が確保された屋内避難階段などを新たに基準に加えるものです。本市としても、問題がないと考えています。

白井議員:また、地域型保育事業では保育士資格者の割合や給食の扱いについて、認可保育所と格差があります。小規模保育事業B型では保育士資格者割合は、国の2分の1基準より上乗せがあるものの、3分の2でよしとし、C型では、保育士資格を義務付けておらず、給食の自園調理も義務付けません。食物アレルギー対応の点からも心配です。地域型保育事業を利用するのは主に3歳未満児であり、保育所での死亡事故の大半は3歳未満児であることから、命と育ちを等しく保障する観点で、すべての施設・事業で認可園と同等に全員保育士、自園調理とすべきです。見解を伺います。

林市長:地域型保育の保育士配置や給食の取り扱いについてですが、地域型保育は現行の横浜保育室や家庭的保育事業の受け皿となる事業であることから、現行の水準を確保できるようにするとともに、児童福祉審議会等の意見も踏まえて取りまとめておりますので、十分であると考えています。

横浜保育室を条例で位置付けて必要な支援を

白井議員:次に、新制度のねらいは、事業者の新たな参入を増やすことにあります。が、一方で、これまで横浜の保育を担ってきた、定員約5000人の横浜保育室が、岐路に立たされている現状を直視する必要があります。
個人立で財政基盤の弱い園長先生からこんな声を聞いています。認可園にしても、小規模事業にしても、設備基準を満たすには改修が必要で、移行補助金はあっても、新たに億を超える借金をすることになる。市から、小規模事業をやりませんかと案内が来ているが、定員が減って採算がとれるのか見通しが立たない。判断材料を市に聞いても、国が明確にしていないのでといわれて、困っている。こういう声です。そこで、横浜保育室が新制度の施設や事業へ移ることの意向や困難さについては、本市としてどのように把握しているのか、伺います。
これまで年度途中の受け入れに長年実績のある横浜保育室をないがしろにしていいはずがありません。その役割を正当に評価するならば、新制度への移行を押し付けることなく、市独自に条例で位置づけ、必要な支援を今以上に手厚くすることが必要です。合わせてお考えを伺います。

林市長:横浜保育室の認可移行についてですが、横浜保育室から順次提出していただいている認可移行計画書などや個別相談等で移行を把握しているところです。そのなかで課題としては、バリアフリー対応等ハード面の整備が必要となることや、保育士の確保が必要なことなどがあげられています。また、横浜保育室事業の条例化の予定はありませんが、新制度に移行しなかった横浜保育室については、当分の間、運営を継続できるよう配慮していきます。

届け出園にも補助を

白井議員:また、約3000人が通っている届け出園を子どもの保育を等しく保障する立場から、支援がない現状を放置するのではなく、市として補助基準を定め、支援に値する支援をすることが必要です。合わせて伺います。

林市長:認可外保育施設の届け出園に対する支援についてですが、本市が定めた基準を満たした認可外保育施設については、横浜保育室として認定し、運営費などを助成しています。公費で助成を行い、保育の質を確保するには一定の水準が必要であると考えていますので、基準を満たしていない認可外保育施設に対しては一律に横浜保育室のように支援していくことは難しいと考えています。なお、認可外保育施設に対して説明会を実施し、一定の基準を満たすことで新制度の給付対象となることも可能であるとお伝えをしております。

学童クラブの指導員と基準を満たす物件確保に支援を

白井議員:次に、放課後児童健全育成事業が新制度に位置づけられ、基準が条例化されます。市内学童クラブは、50年に及ぶ長い歴史があり、215か所で1万人近くの子どもたちが放課後、生活しています。この条例化を機に、毎年40万筆近くの署名とともに議会に出される請願に沿って、現行水準の引き上げが必要です。
条例案では、職員配置は国基準と同じで、正規1名、補助員1名です。現行は指導員2名体制です。これは、子どもの安全を担保するうえで、必要欠くべからざる制度であり、現行水準を下回ることがあってはなりません。国基準以上に引き上げる分は市独自予算となっても、2名体制を継続するべきです。
対象児童が6年生まで拡大されることに伴う指導員確保のためにも、処遇改善できるよう、補助金の増額も必要です。どうか伺います。

林市長:放課後児童クラブの常勤指導員2名体制の確保と処遇改善についてですが、現行でも児童数が19人以下の小規模クラブにおいては常勤指導員1名体制ということもあり、本条例は最低基準を定めるものとして、国の基準通りの規定としています。人材確保については、国の動向を見極めながら本市としても対応を検討していきます。

白井議員:次に、面積基準に満たないクラブは90か所になるといわれています。分割や耐震のない施設の移転も必要ですが、クラブ任せでは進みません。行政として施設確保計画を作り、区に担当部署を置き、保護者負担を増やさないよう支援の拡充も必要です。市長の覚悟を伺います。

林市長:放課後児童クラブの物件確保策についてですが、現在、条例で定める面積基準を満たしていない放課後児童クラブについては、経過措置期間である施行から5年間で基準が満たせるようにしていきます。そのため、保育所待機児童対策のノウハウなども活かしながら、地域情報が得やすい区と局が連携して、物件確保に取り組んでいきます。

子どものニーズに合わせて放課後キッズクラブの改善を

白井議員:最後に、小学校内にある放課後キッズクラブについて質問します。整備は中期計画目標の165か所に対し、実績は92か所止まりで、目標に全く届いていません。しかも、5時以降の参加人数は813人で、1校平均わずか10人弱です。この数字は、キッズクラブが留守家庭児童の十分な受け皿にはなり得ていないことを物語っています。
本市はこのキッズクラブを全校展開して留守家庭児童対策にあたろうとしています。これを本気でやろうとしたら、平均10人の実態を打開するしかありません。今の制度では、運営事業者の頑張りにも限界があります。キッズクラブのあり方が根本から問われます。子どものニーズに合ったものへと改善が必要であり、打開策を講ずるべきです。この点での市長のお考えを伺って、質問を終わります。

林市長:放課後キッズクラブにおける17時以降の利用についてですが、放課後キッズクラブの1日平均利用児童数は約70人ですが、17時以降の利用については児童が高学年になると習い事をしたりひとりで留守番ができたりすることから、利用頻度が減少する傾向にあります。また、留守家庭児童であっても、親の帰宅に合わせて17時前に帰宅する児童も増えており、それぞれの家庭の事情と児童の状況に合わせてご利用いただいています。なお、全小学校の放課後キッズクラブ転換を促進するにあたっては、引き続き関係者の声を聞きながら進めていきます。
以上、白井議員のご質問にご答弁申し上げました。