議会での質問・討論(詳細)
2014年9月9日

■「一般質問」 あらき由美子議員(2014.9.10)

◎質問と市長答弁は次の通りです。なお、実際には、質問と答弁がそれぞれ一括して行われました。

あらき議員:私は、日本共産党を代表して質問いたします。

大胆な投資は都市インフラではなく子育て・福祉・医療に

まず、中期4か年計画素案に対する考え方についてです。
8月28日に市長は2014年度からの中期4か年計画素案を発表し、記者会見で「今後は将来の横浜のために、大胆な投資をする必要がある」、「人も企業も輝く横浜の実現をめざす」と述べています。その政策の基本に、安倍政権の成長戦略をおいています。国は、世界で一番ビジネスがしやすい都市づくりをめざし、国家戦略特区を立地競争力の強化策として位置付け、都市の競争力向上と産業インフラの機能強化をうたい、国際コンテナ戦略港湾、首都圏3環状等の整備を推進しています。

市の計画素案では未来のまちづくり戦略を描いていますが、その視点とメニューは、MICE(マイス)、カジノなど、アベノミクスと同じものが目立ちます。横浜の「人、もの、金」を国策につぎこもうとしているようにも見えます。多国籍企業の競争力と国民経済の成長・発展は結びつかず、かい離する関係にあることに、今こそしっかりと目を向けるべきです。国から自立している地方自治体の長として、安倍政権の成長戦略のリスクを正視し、しっかり分析することが必要だと思いますが、それをしないのは、安倍政権の戦略が成功しているから大胆な投資をしてもリスクはないと考えているのでしょうか。この点についての市長の認識を伺います。

7月下旬に発表された政府の経済指標で最も落ち込んだのは個人消費で5.9%の減、8月29日公表の家計調査では勤労世帯の収入は名目2.4%、実質6.2%減で10か月連続の減少という結果でした。これは、大企業で増えた利益が国民には還元されていないことを意味しています。この結果から、市長が言うように大胆な投資をしたからといって、企業の利益が増して法人市民税が増えても、個人市民税が増えるとは考えられませんが、どうでしょうか。

市長は「子育て支援や福祉医療に力をいれてきた」としていますが、「これらの施策は、経済振興がなければ成し得ない」と言っています。しかし、市長のいう経済振興は、計画を見る限り国の成長戦略の焼き直しであり、結果として恩恵をうけるのはほとんどが大企業です。しかし、市民税の8割は個人市民税であり、法人市民税は2割にすぎないことから、市の財政を支えているのは市民です。しかも計画の財政見通しでは、法人市民税は2014年度の660億円が2017年度630億円に30億円減少と推計しています。この点からも、個人市民税が増えるようにすることが現実的な増収対策となります。大企業向けの産業基盤整備や企業誘致を核とした経済振興のあり方を180度転換して、家計の所得を増やす方策にこそ軸足を置くべきです。

本来、地方自治体がなすべきことは、市民の暮らしに関わる福祉や医療を向上させることです。市長が、大胆な投資の名による大企業向けのインフラ整備に多額の税金を投入するより、市民税を納めてくれる市民にこそ投資すべきです。この点についての市長の明快な見解を伺います。

計画では、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催を踏まえ、「横浜を世界に売り込む絶好のチャンス。この機を逃さず必要な投資を大胆に行う」として、4年間の市債発行額をこれまでの計画より1000億円上乗せして6000億円にしています。マスコミ各紙も、「東京オリンピックに向け、大型施設や交通インフラを重視したまちづくりにシフト」「前計画と比べ、山下ふ頭の再開発、新市庁舎、MICE施設など都市インフラ強化に重点」「都心臨海部再開発に力点」と報じています。このような大胆な投資をして、横浜が東京と競う意味がいったいどこにあるのでしょうか。

昨年度の市民意識調査では、「移転先として現住所を選んだ理由は何か」のトップは「通勤・通学・買い物の便がよいから」で、次いで「周辺が静かだから」となっています。市長が進めようとする都心臨海部の再開発などを市民が望んでいるとは思えませんが、どうして東京に対抗しようと考えているのか、その理由を伺います。

これらのインフラ整備を東京オリンピック前に行うマイナスは、建設資材や人件費が上がること、東日本大震災被災地の復興に妨げになること、地震や集中豪雨など防災対策や生活関連公共事業に充てる財源確保が後回しになることです。さらに新しいインフラを作れば、当然それらの維持・管理費が生じます。この点にどのように対応するのか、伺います。

現存の市民利用施設、学校施設、市営住宅、公園、道路など市民生活に密着した公共施設の保全・更新に、毎年これから900億円必要とされていますが、中期計画素案では年平均620億円に引き下げられています。市民生活を良くするというのならば、これらの市民の身近な施設整備こそ優先すべきなのに、なぜそうしないのでしょうか。新たなインフラ強化で市民の切実な要望が後回しになることが明らかですが、この点での市長の見解を伺います。

林市長:あらき議員のご質問にお答え申し上げます。
中期4か年計画について、ご質問いただきました。
中期計画における投資への考え方ですが、少子高齢化の進展や都市インフラの老朽化、大規模な自然災害など、横浜を取り巻く環境の変化に強い危機感を抱いています。こうした課題を乗り越え、市民のみなさまの安心安全な暮らしと活力ある横浜経済を実現するために、必要な投資を行ってまいります。

投資と税収の関係についてですが、都市活動を支える基盤整備や強靭な防災力を備えることに加えまして、子育て支援や健康づくりなどにより、あらゆる世代が力を発揮することが、横浜の成長・発展には不可欠です。その実現に向けて、必要な施策を推進することが、経済の活性化、税収増につながるものと考えています。

東京に対抗して投資を行う必要はないとのことですが、人や投資が東京に集中していくなかにあって、横浜のプレゼンスを高めるため、活力をさらに高める必要がある、そういった必要な施策に取り組んでいきたいと思うわけです。また、東京とも連携を図りまして、羽田空港の国際化や国家戦略特区などを推進して、互いの発展につなげていきたいと思います。

インフラ整備による維持費の負担についてですが、今回の計画においても都市のインフラの計画的な保全・更新については重要なものと考えておりまして、必要な経費を見込んでいます。都市基盤施設も含めた公共施設の管理に関する基本方針を26年度中に策定するなど、これまで以上に効率的効果的な保全・更新に努めていきます。

インフラ整備と市民のみなさまの暮らしとの関係についてですが、道路や上下水道をはじめとするインフラは、市民のみなさまの日々の生活を支えており、防災・減災の観点からも安全で安心な暮らしに欠かせないものです。また、子育て、教育、医療など市民生活のための施策を充実させる上で、横浜経済の活性化が不可欠であることから、経済活動の基盤となるインフラ整備は重要と考えます。

(第2質問)
あらき議員:これまでも高秀市長時代に大胆な投資として、業務核都市構想実現のために、みなとみらい21,南本牧ふ頭、上大岡再開発、京浜臨海部、舞岡リサーチパーク構想などを実行してきました。しかし、これらの事業は借金を膨らまし、市民の税金で結果的に穴埋めをしています。この失敗例がありながら、新たに大胆な投資をするという市長の考え、その責任はいったい誰がとるのか、この際、明確にお答え下さい。

林市長:あらき議員のご質問にお答えいたします。
いままで先人が企画・計画し、実行してきた投資の結果をちょっとお話をいただきましたが、私はその当時は市長をやっておりませんけど、先生がいまご指摘になった失敗というふうには言い難いのではないかと思います。様々な検証の仕方がございますけれども、やはり現在の横浜市の市政の発展に、私はずいぶんと大きく寄与しております。一つひとつの検証というのはいろんな考え方あると思いますけど、失敗という言葉でくくることはできないかなと。

遅れている小児医療費無料化の年齢引き上げをなぜやらないのか

あらき議員:次に、中期計画の具体的な施策についてです。
市長は、「あらゆる人が力を発揮できるまちづくり」として、切れ目のない子ども・子育て支援を打ち出しています。昨年の市民意識調査では、第1子が小学校入学前の世帯の、市政への要望のトップは、子育て支援、次いで学校教育の充実となっています。
その具体的な要望として考えられるのは、日本共産党市会議員団が今年の夏に行った市民アンケート結果から、小児医療費無料化の拡充、中学校給食の実施です。
小児医療費無料化は、県内の市ではすでに厚木市・海老名市は所得制限なしで中学校3年生までで、来年度から横須賀市は現在の小学校3年生を小学校6年生まで、愛川町は中学3年生まで引き上げるとしています。これらは市長・町長の決断があったからです。県内で小1まであるいはそれ以下は、横浜市を含む2市2町だけです。
これらの自治体は、決して財政が豊かなわけではありません。「今後は将来の横浜のために、大胆な投資をする必要がある」というのであれば、子育て施策にこそ大胆な投資をすべきです。なぜ小児医療費無料化の年齢引き上げを計画素案に盛り込まなかったのか、その理由をはっきりと説明してください。

林市長:中期4か年計画素案の具体的施策についてご質問いただきました。
小児医療費助成の拡充についてですが、この事業は将来を担う子どもたちの健やかな成長を図るために、大切な施策のひとつと認識しております。素案の中で課題のひとつとして検討を進めることにしています。拡充にあたっては多額の予算を必要とするため、実施のタイミングについては、今後慎重に見極めたいと考えています。

(第2質問)
あらき議員:小児医療費無料化についてです。現状でも県内の他都市と比較して、遅れをとっていることは明白です。その認識がまず、あるのでしょうか。
国際コンテナ戦略港湾などのインフラ整備やカジノを誘致しても、人に投資しなければ、子育て世代は横浜に住み続けません。ハードで都市間競争をするのではなく、ソフトにこそ目を向けるべきですが、この点についての市長の見解と決意を伺って、私の質問を終わります。

林市長:それから、小児医療費でございますけど、当然でございます。もちろんやりたいし、先生方もそうお思いだと思います。しかし、誠に恐縮でございますが、市長として全体の横浜市の持続的な成長のためのバランスを考えながら、もう本当に私としては真摯に取り組んでおりますので、そういったことも可能であればやりたいと思うし、いまの、ただいまの財政状況ではバランスが非常に難しいというところでございますから、決してやりたくないということではございません。

それから、あとは人に投資をすべきとおっしゃっておりますけど、私は子育て支援等をはじめ、まあ先ほど他の会派からのご質問をいただきましたけれども、現場主義ということで、本当に市民のみなさまに寄り添いたいと思いつつですね、やってまいりましたから、人に対する投資というのはけっして怠っているというつもりもございませんし、先生のお気持ち、ご質問、私は全く理解しておりますが、私自身の考え方はそうだというふうにお答え申し上げたいと思います。以上、ご質問に申し上げました。

土砂災害に強い横浜に向けてあらゆる対策を早急に

あらき議員:次に、未来を支える強靭な都市づくりについてです。昨年の市民意識調査で市政への要望のトップは地震などの災害対策です。計画素案では、崖地の防災対策15億円、地震火災対策74億円を見込んでいますが、新市庁舎建設等の270億円、高速横浜環状道路1,037億円と比較すると、災害対策費はあまりにも貧弱です。この点での市長の見解を伺います。

土砂災害を考えた場合の本市の特徴は、市内全域に急傾斜地や崖、谷を埋め立てた盛土造成地等の不安定な人口地盤が広大に存在していることです。昨今発生しているような記録的豪雨が発生した場合、これらの不安定地盤が崩壊する可能性が大きいと考えられます。現に、今月6日の大雨で、旭区東希望が丘他市内2か所で土砂が流出し、負傷者やフェンスの破損などが報告されています。

横浜市内の土砂災害防止法による急傾斜地の警戒区域は2,431で、そこには9,815の崖があります。これら全て崖の安全パトロールを、今年の6月から建築局職員4人体制で、年間400件のペースで始めていると聞いています。現場を見て、危険と思われる崖の所有者には、市の崖防災対策工事助成制度のパンフレットを渡し、アドバイスをしているとのことです。しかし、現状の4人体制では、すべての崖の調査が終了するまでに25年もかかります。本市では、区と連携強化し職員体制を増やすなど、年間400件のペースを引き上げることは喫緊の課題だと考えますが、市長の見解を伺います。

これまでの中期計画で、崖地の防災対策が目標に届かなかった理由は、市の助成制度が崖の所有者に伝わりきらなかったことと、経済的負担が増えることだと聞いています。制度の周知徹底が重要であることは言うまでもありません。私の住む南区では、区づくり推進費を活用して土砂災害ハザードマップを拡大して作り直し、該当区域への再度配布を考えているとのことですが、そういう区と局との連携も必要です。

また、崖の防災対策の今後4年間の目標数値は100件、15億円ですが、この目標が適切であるかどうかも問題です。目標助成件数と予算を崖の数9,815に見合ったものに引き上げることが必要だと考えますが、見解を伺います。

先月の集中豪雨による土砂災害で多くの尊い命が奪われた広島市では、その原因のひとつに土砂災害警戒の対応の遅れがあると言われています。本市では、370万市民の命と財産を守るために、土砂災害の特別警戒区域の指定手続きを速やかに行うよう県に強く求めるとともに、防災無線の設置、危険な崖地付近の移転費用の補てんなどの土砂災害対策を速やかに講じるべきですが、市長の決意を伺います。

さらに崖地対策を進めるためには、崖防災対策工事助成制度の対象とならない崖についての対策も必要です。南区では、庚台・三春台をはじめ唐沢・平楽、大岡などの地域に、重機が入らない幅の狭い崖がいたるところにあります。市民の命を守るために、工事手法や助成方法を検討し、必要な対策を直ちに講じるべきと考えますが、市長の決意を伺い、1回目の質問といたします。

林市長:中期計画の素案の災害対策費についてですが、基本政策の災害対策に関係するふたつの施策で合わせて約3000億円を計上し、自助・共助の取り組みとそれを支える公助の取り組みを着実に進めていきます。

区との連係を強化し、直ちにパトロール調査をすることについてですが、建築局の技術職員が各々の崖について、現場での地質調査や崩壊の想定を適格に行う必要がありまして、専門的知識と経験が求められます。引き続き、現地を熟知する区役所職員との連携を図るとともに、民間の専門機関との協力を検討するなど、さらに調査を推進していきます。

新中期計画における崖防災の助成金制度の目標値を引き上げることについてですが、職員が崖の所有者に対し、崖の状況や改善について丁寧にご説明していくほか、土砂災害ハザードマップなどを活用して、PRを進めます。これらの取り組みにより、中期計画の目標値の引き上げを考えています。

土砂災害特別警戒区域の指定についてですが、土砂災害特別警戒区域は土砂災害防止法に基づき神奈川県が指定します。その指定にあたっては、法律に基づく地質調査や説明会の実施などを通し、住民の理解を得ることが不可欠です。そのため、これまで以上に県との連携を強化して、調査や説明会を円滑に進めていきたいと考えています。

新たな工事手法や助成方法を検討することについてですが、擁壁等による本格的な崖の改善には多額の工事費や時間がかかるため、暫定手法を用いた改善工事に対する助成制度の検討を行うなど、崖の保全策が進むよう取り組んでまいります。
以上、あらき議員のご質問にお答え申し上げました。


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