議会での質問・討論(詳細)
2008年10月3日

【2007年度決算特別委員会】「環境創造局」 中島文雄議員

市民の努力が報われる緑被率の測定方法を用いよ

中島議員:日本共産党を代表して質問します。
 最初に「横浜みどりアップ計画」に関連していくつか伺います。
 「素案」が発表されて以来、「計画」の基本データとなる緑被率調査のあり方や、緑新税の創設など、大きな物議をかもし出しています。緑被率は航空写真により緑で覆われた土地の面積の割合を解析するものですが、100平方メートル以上の抽出では32.7%なのに、300平方メートル以上の31.0%の数値を用い、「2つの緑被率」とか「減少を意図的に」、また「新税導入の根拠意識か」などの疑問が出されているところです。疑義を生むような緑被率の変化、大事なことですから、そういうことを示しているような不十分な「素案」については、記述を改善すべきだというふうに思うんですが、いかがですか。

小松崎環境創造局長:ご心配いただいてありがとうございます。
 本市は、かなり以前から市内の緑の総量をビジュアル化といいますか、緑被率の変遷率として市民の方々に説明をしてきておるわけでございます。緑被率といいますのは、前に先生の方からご説明ございましたように、市域を上空から写真撮影をしまして、これをもとに一つひとつ樹林地とか農地とか判定して、面積を計測するというかたちでやってきております。
 その変遷の中で、航空写真の精度とか判読とか集点技術の進歩がございました。したがって、調査手法が進化・変化してきているのは、これ事実でございます。私どもも、調査方法を改めて全部調べてみました。昭和50年の頃のメッシュ方式、これは市域全体をメッシュに切って判読しているんでございますけれども、そういう比較的荒っぽいやり方から、現在のデジタル画像集計方式まで、この30年間で概ね4回の改良が加えられておりました。手法が変化しますと、当然ながらその影響が若干でてくるわけでございます。ただ全体として、この30年間みても緑が大きく減少していると、こういう事実になんら変わりはございません。
 それから、そういう物理的な空から見た調査と合わせまして、固定資産税の地目別データによる検証結果も合わせてご説明するように、私どもは努めてきたところではございます。
 それから、過去の調査方法に変化があったことは事実でございますので、この点については誤解のないように、今後の資料については念のため注釈をきちんとつけてはいます。

中島議員:現在は素案ですから、正式な案をつくるときにはこういう記述について市民がわかるように改善するということを求めておきたいと思います。
 「みどりアップ計画」の中では、緑をつくる新たな施策の一つとして、緑化地域制度の活用を位置づけています。この制度では対象となる建築敷地面積を500平方メートル以上とし、緑化率を10%以上と義務付け、この場合は最小でも50平方メートル程度の緑が生まれることになります。この制度で「緑の量の成果である緑被率」を増やしとしながら、現行の300平方メートルや100平方メートル以上の抽出測定ではカウントされません。測定の抽出規模をより小さくするなどして、緑被率のアップへの市民努力に報いる、こういう改善が必要だと思うんですが、いかがですか。

小松崎環境創造局長:緑被率につきましては、私ども来年に調査予定年としております。現在の技術では詳細なデータの把握がより簡便にできると、こういう状態にすでになっておりますので、データ自体の精度はなるべくあげていきたいというふうに思っています。
 一方で、平成13年と16年の調査が基本的には同じ手法で行われてきておりますので、緑の変化を捉えるという意味では、それらと同じ尺度でも比較できるように、合わせて工夫をしていきたいと思っております。

中島議員:測定の抽出規模を小さくするということで、たとえば他都市の例では大阪市では1平方メートル以上だとか、名古屋市では10平方メートル以上からとか、同じ航空写真でこういうことができるんですね。この問題について、もう少し明確に答えてください。

小松崎環境創造局長:緑被率のやり方は本当に各都市様々でして、対象とするものの少しずつ違いますし、いま先生がおっしゃった計測の仕方も1平米からのものもあれば、400平米からのもののあると、こういうかたちではございます。
 先ほど来先生がおっしゃっている300平米をひとつのかたまりとして調査をしていたのではないかと、あるいは100平米というものもあったではないかと、こういうご指摘なんですけれども、それらは前回調査のことをおっしゃっているんだと思いますね。前回の平成16年の時のデータの調査といいますのは、基本的には300平米をかたまりにしたものとして、指数をお示ししているんですけれども、その300を計算する過程の中で100平米単位で捉えて、最終的にその精度を上げて300平米というものをだしたと、こういう考え方でございますから、誤解のないように申し上げておきますけれども、100平米と300平米と両方の数字を出すために作業をしたということでは決してございませんでした。そのことだけ申し上げておきたいと思います。

中島議員:今後の緑被率の測定の仕方、抽出規模、これを細かくして、市民の努力に報いるべき。このことについてまだ答えていないので、もう一回お願いします。

小松崎環境創造局長:先ほどお答えしたとおりでございます。データの精度は上げてまいります。

中島議員:まあ、しょうがないですね。

市民緑地制度の活用で緑地の保全

 緑被率も一つの指標でありますけれども、なんといっても貴重な緑地を守ること、これが大事です。樹林地や農地を守るために、調整区域についてはみなさんの努力もあって「瀬上の森」の開発を防いだように、行政が関与できる仕組みがあります。問題は、先ほど質問がありましたけれども、市街化区域をどう守るかです。
 そこで、市街化区域の緑を保全するため、固定資産税等の減免などによる緑地保存地区制度の事業の推進が強く求められます。しかし、緑地保存地区の指定面積が増えるどころか、この5年間をみてみますと13ヘクタールも減って、現在160ヘクタール程度だというのが実態です。2007年度に対象面積を1000平方メートルから500平方メートルに改善をしたところですが、実態に即してもっと事業の推進をめざして、さらに対象面積を引き下げる、こういうことを図るべきじゃないかと思うんですけれども、どうですか。

小松崎環境創造局長:これは、私どもの市街地の中の緑地を残し、なるべくまた増やしていきたいと、こういう気持ちでございます。そういうことがあったので、昨年度制度改正をしたというかたちでございました。
 先ほど伊藤議員にもご答弁申し上げたんですけれども、その制度改正をした結果として、これは19年度1年だけなんですが、実は非常に改善したわけでございます。ですから、いましばらくこの緑地保存地区については、私どもとしては様子を見させていただきたいなというふうに思います。それでもし改善がなかなか図られないというようなことであれば、これは趣旨に沿わないかたちになりますので、制度の改正も含めて検討していきたいというふうに思います。いずれにしろ、もう少し時間をいただきたいなというふうに思います。

中島議員:たしか都市緑地法で、300平方メートル以上を対象とする緑地保全制度というのがあると思うんですね。この検討はぜひすべきじゃないかと思うんですが、本市制度の周知徹底の文書の中に入っていないんですね。300平方メートルの市民緑地制度をどういうふうに今後検討されますか。

小松崎環境創造局長:これは、緑地保存制度の中ではそれぞれ微妙に特質があるんですが、いま先生のおっしゃった市民緑地制度というのは一番単位の小さい300平米からというかたちの考え方でございます。私どもは改めてこのみどりアップ計画を新規拡充施策ということを考える中で、市民緑地制度についても活用を図っていきたいというふうに申し上げております。
 ただそこでひとつ申し上げておきたいのは、そもそもこの市民緑地制度というのは、法に基づく制度ではあるんですが、横浜市もかつて市民の森を立ち上げましたけれども、あれは独自の市の制度だったんですが、その市民の森制度を実は下敷きにして、法律の方がそれをすくい取るかたちで制度化したというのが、この市民緑地制度なんです。
 そういうことがあって、私どもは、この制度ができた時点ではいろいろ議論があったようですけれども、メリットはあまりないというかたちで、これの適応は考えてこなかったというのが実態だったときいています。ただ、現状を踏まえると、やはり小さな所まできめ細かくすくい取っていくということも、一方では大事なことでございますので、これの導入について検討してまいります。

中島議員:次に、「緑をつくる」施策として4つの事業を示されておりますけれども、事業の内容と考え方を改めて伺います。

小松崎環境創造局長:一つ目は、地域ぐるみで緑化を推進するという事業でございまして、たとえば連続した生垣による緑化であるとか、地域のシンボルツリー植樹であるとか、商店街の緑化、そういった地域全体で緑を増やすというときの支援でございます。
 二つ目は、個々の緑化を推進するものでございまして、校庭の芝生化とか、屋上・壁面の緑化、民有地公有地それぞれの緑化。
 三つ目は、身近な緑をまちの緑として大切に、街路樹ですね、これを管理・育成していくという考え方。
 四つ目は、ただいま情報がございました緑化地域制度などの諸制度の効果的な運用・充実と、そういう構成でございます。

中島議員:では、この施策で、どの程度の緑の増加を想定しているのか、また緑被率の向上にどう反映させるつもりなのか、伺います。

小松崎環境創造局長:定量的にはなかなか難しいんですけれども、公共施設の緑化拡充では年間2ヘクタール程度、また緑化地域制度の施行で民有地におきまして年間約45ヘクタール程度の緑化を見込んでいるわけでございます。
 一方、いま申しました地域ぐるみの緑づくりということでいいますと、地域の特性によって様々なケースがこれからでてきますので、定量化はできないということになります。
 いずれにしましても、市街地での身近な緑を増やすということを目的としておりまして、必ずこれは緑被率の向上につながっていくというふうに考えております。

工場敷地に緑地を増やさせて、企業に社会的責任を果たさせよ

中島議員:次に、私の住む鶴見区にも関係しますので伺いますが、京浜地区における企業の緑地面積の現況および「京浜の森づくり」事業の目的を説明して下さい。

小松崎環境創造局長:「京浜の森づくり」でございますけれども、現状で京浜地区については平成16年の緑化率を算定したときの数字でございますけれども、緑地は約84ヘクタールということで、緑化率は平均10.8%というかたちになっております。
 この「京浜の森づくり」につきましては、企業のもつ緑とかビオトープなどの公開されている施設を全体でつなげていって、京浜地区全体の緑の拡大と質的充実を図っていくと、そういうことを目的とした事業でございます。

中島議員:京浜地区の現況は84ヘクタール、10.8%程度の緑地だということですが、工場立地法やそれに準拠する本市の条例でも、9000平方メートル以上の工場敷地については15%以上の緑地が義務づけられておりますよね。また、緑の環境をまもり育てる条例では、1,000平方メートル以上の工場敷地については15%の緑化を求めるというかたちで協議する、こういう制度もありますよね。あるいは、工場移転等による遊休地の緑化などを含めて、「京浜の森づくり」事業を通じ、企業に緑地を増やすよう、社会的責任を果たすよう、働きかけるべきですが、いかがですか。

小松崎環境創造局長:この京浜地区では、末広地区など3つのモデル地区を設定して、すでに地元企業と共同で地区緑化計画を策定をしたうえで、緑の質や量の確保とか将来目標、そういったことを共有して作業を進めているわけでございます。企業の方々も非常に緑化については協力的でありますので、私どももこれから工場の建替えの時とかそういった時に合わせて、豊かな緑ということでお願いをすることもございますし、また植樹行動なども一緒にやってきておりますので、そういうなかでもどんどん緑を増やしていきたいというふうに思います。

市民の意見に耳を傾け、拙速な緑新税導入は慎むべき

中島議員:「みどりアップ計画」による関連事業費の内容と、考え方を改めて伺いたいと思います。

小松崎環境創造局長:いま新規拡充施策としてお示しをしております事業に必要なものとして、21年度から5か年の事業費を算出してございます。大きく3つ。樹林地による施策では約490億円、農地による施策では約57億円、緑を市街地につくっていく施策として約50億円と、そういうかたちでおだしをしてございます。

中島議員:税制研究会の最終報告を受ける形で、市は、緑の保全・創造に向けた財源目的として「緑新税」を創設されようとしています。しかし、既存の樹林地や農地保全制度の推進や「緑をつくる」施策を、市民の協力や協働で取り組もうとしている中で、これらの効果を検証しないで、「新税ありき」では市民の理解は得られないことは当然であります。また、私の近くの貴重な緑である「からすの森」も3ヘクタールが高速横浜環状道路の馬場出入口建設で破壊されようとしています。あるいは、樹林地・斜面地でのマンション建設等による乱開発。こういう開発の放置では、「みどりアップ計画」は絵に描いた餅と、疑問を持たざるを得ません。これら市民の意見に十分耳を傾ける、そして拙速な「緑新税」の導入は慎むべきですが、これについて阿部副市長に伺います。

阿部副市長:これまで2回にわたりまして1万人の市民の方のアンケートを集計しております。それからシンポジウム等の実施もしてきておりまして、市民の皆様方のご意見の把握に、私ども最大限努めているところであります。そうした結果、横浜の豊かな自然環境を守り、新たな緑を創出していくということにつきまして、市民の皆様方強いご関心をお持ちだということを改めて私ども認識したところであります。こうした結果を踏まえまして、みどりアップ計画の推進に向けまして、今後とも市会の皆様方、あるいは市民、関係団体の皆様方のご意見を踏まえまして、市民の広くご理解ご協力を得られるようなかたちで施策の内容を確定していくとともに、必要となる財源の確保等について、具体的に検討してまいりたいと考えております。

下水道施設の耐震対策を急げ

中島議員:次は、下水道の地震対策についてです。
 最近の市民意識調査でも、「地震対策」の要望が31.6%と上位を占めているところです。そこで、最近発生している大規模震災における下水道施設の被害内容や市民生活に対する影響などについて、担当部長で結構ですので、報告願います。

尾仲政策専任部長:最近下水道の被害が最も大きかった平成16年の新潟県中越地震での被災について申し上げますと、多くの家屋、また避難所で、下水管きょの破損などにより、水洗トイレが利用できなかったこと、幹線道路上のマンホールが液状化により浮き上がり、交通に支障をきたしたこと、魚沼市の堀の内浄化センターで水処理施設などの破損により、機能が停止したことなどがあり、下水道が暫定利用できるまでに約1か月かかりました。
 また、水洗トイレが使えないことによる公衆衛生上の問題とともに、飲料水を我慢してストレスが発生するなどの健康上の問題など、市民生活に大きな影響を及ぼしております。

中島議員:それでは、大規模地震に対する本市下水道の被害想定、どういうふうになっていますか。

小松崎環境創造局長:直近のものでは、17年度に八都県市で実施をいたしました大規模地震による下水道被害、その影響に関する調査がございます。南関東地震を想定した場合ですけれども、埋立地とか河川沿いの低地で液状化が発生しまして、下水管きょの被害延長約960キロメートル、全体の8.5%にのぼるというこの影響で、約31万人が下水の使用に支障をきたすと。それから水再生センターにつきましては、一部が液状化によって処理機能を停止する。一部は構造物とか設備の一部で被害を受ける可能性が高いと、こういう調査結果になっております。

中島議員:この本市下水道事業の「中期経営計画2007」によると、地震対策では、水再生センター、いわゆる下水処理場ですね、や汚泥資源化センター、ポンプ場の耐震化は、2006年度末時点で0%、管きょの耐震化は3%というふうになっています。下水道施設の心臓部での耐震化が現時点で0%、大変私心配するところですが、今後の耐震対策に対する考え方を説明してください。

小松崎環境創造局長:大地震発生時での市民の衛生的な生活環境を維持するために、下水道としては最低限の規模をまず慣行することが必要でございまして、下水処理施設でございます水再生センターとポンプ場の沈殿池と消毒設備の耐震化をまず優先的に進めるということです。それから、液状化の可能性の恐れのあります区域での地域防災拠点のトイレにつながる環境の耐震化、これも合わせて重点化して進めてまいります。

中島議員:阪神淡路大震災での避難所アンケート、貴重な資料があるんですね。この「今必要な物」の要望は、震災初期では「トイレ」がトップなんですね。この要望に十分応えるべきだというふうに思うんですが、本市は2007年度に地域防災拠点での仮設水洗トイレの設置に向けた技術指針の策定にはいりましたけれども、その内容と今後の事業計画について、伺います。

小松崎環境創造局長:地域防災拠点で衛生的に使用できる仮設の水洗トイレ、これも必要でございまして、水道を使用できない場合でもプールの水を利用できると。少ない水でも汚水を排水できると。そういう下水道直結型の排水設備をあらかじめ整備をするものでございます。この排水設備について、構造とか管きょの規模、あるいはプールからの給水方法、そして全体的にどのくらい金をかけるかと、こういう技術基準を今年度末までに策定をしてまいります。

中島議員:震災から市民の命と財産を守ることは、本当に自治体の大事な仕事だと思うんです。厳しい財政状況だからこそ、災害に強いまちづくりや市民生活の安全などに重点をおいた公共事業に転換が求められていると思うですね。その点から、下水道事業における地震等の災害対策の推進に向けた決意、これ阿部副市長から伺います。

阿部副市長:下水道、市民生活を支える根幹的な施設ということで、大規模災害時においても、最低限の機能を確保しなければいけないと思っております。厳しい財政状況ではございますが、優先順位を明確にしたうえで、必要な対策を着実に講じてまいりたいと考えております。

中島議員:時間ですので終わります。


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