議会での質問・討論(詳細)
2014年10月21日

■「決算に対する討論」 大貫憲夫議員

私は、日本共産党を代表して、2013年度横浜市一般会計等決算の認定に反対し、討論を行います。

安倍自公政権の暴走に飲み込まれ、自民党と一体化した市政

反対の理由の第1は、安倍自公政権の暴走に飲み込まれ、自民党と一体化した市政が進行したことです。
2013年度決算の最大の特徴は、第二次安倍政権が経済政策として打ち出したアベノミクス実現のために、ヒトとモノとカネをつぎ込んだことです。8月の市長選挙での林市長と自民党の政策合意で、横浜市が安倍政権の下請け機関に成り下がったことがいっそう明らかになりました。
21世紀に求められる地方自治体のあり方は、住民自治の立場に立ち、自らの頭で施策を実施することです。それが地方自治の本旨です。

アベノミクスの名のもとで横浜で大型事業を加速・拡大
アベノミクスは、国土強靭化と国際競争力強化の名のもとで、景気浮揚策として国際コンテナ戦略港湾、首都圏3環状道路などの大型公共事業バラマキ政策を掲げました。それを受けて林市長は、高速横浜環状道路、南本牧大水深コンテナターミナル、横浜駅周辺再開発、環境未来都市などの大型開発や事業を加速・拡大しました。
2013年度は、国の大型補正予算を踏まえた2月補正予算を加えて15か月予算が組まれました。2月補正は、一般会計367億円のほぼ全額が公共事業でした。15か月予算における横浜環状道路整備費は前年度比1.8倍の223億8,400万円、国際コンテナ戦略港湾推進費も168億円と突出しています。

自民党の教育への政治介入に手を貸す
自民党との一体化による大きな問題のひとつは、教育への政治介入を許したことです。新聞報道によれば、市長選前の昨年6月、林市長は、侵略戦争賛美の歴史教科書と、明治憲法称賛、改憲志向の公民教科書を継続使用する協定を自民党と結びました。これは、自民党の教育への政治介入に手を貸したことにほかなりません。
また、自民党議員の指摘で、市教育委員会が2012年度版副読本「わかるヨコハマ」の関東大震災における朝鮮人虐殺の記述を2013年度に変更し、2012年度版を生徒から回収して処分したことも、これも許されません。
さらに、盗作問題やさまざまな記述の間違いが指摘された自由社版中学歴史教科書を2010年度から4年間修正せずに使い続けたことも、これも大きな問題です。

将来に禍根を残す政策的誤謬

反対理由の第2は、将来に禍根を残す政策的誤謬があったことです。
今年1月に新中期4か年計画策定の基本的な考え方が出され、8月に素案が発表されました。計画では、横浜市は「都市としての大きな転換期」を迎えており、「未来に向けて解決すべき課題」として少子高齢化、生産年齢人口の減少、都市インフラの老朽化などを上げ、大胆な「未来への可能性を切り拓く投資」で景気を回復させて法人市民税を増やし、「解決すべき課題」解決の原資にするというものです。この考えは、まさにトリクルダウンを主張するアベノミクスそのものです。
市長のいう「都市としての大きな転換」とは、アベノミクスの波に乗って経済インフラ整備に大胆に投資することです。これは「転換」ではなく、経済成長政策に終始した20世紀型への「逆戻り」であります。人口減少を見据えて、21世紀は、巨大インフラや箱ものに大胆な投資をしてはならない時代です。それをあえて行おうとするのは市長のミスリードと言わざるを得ません。

なぜ異常なほどオリンピックにこだわるのか
計画では、東京オリンピック開催に合わせるべく、高速横浜環状道路北西線・南線をはじめ、さまざまな大型事業を一挙に実施するとしています。しかしいま、アベノミクスとオリンピックに向けての施設整備で人件費や資材費が高騰しており、今後さらに上昇が見込まれます。一方、東日本大震災の復興事業は遅々として進んでいません。このような中、なぜ異常なほどオリンピックにこだわるのか。これは、まさに大型公共事業のバラマキで景気浮揚を狙う安倍政権への支持・支援以外にありません。

大型公共事業は市民生活向け公共事業を大きく圧迫
これらの大型公共事業は、市民生活向け公共事業を大きく圧迫しています。
道路整備費を例にあげると、少子高齢社会を迎えて、安全で移動しやすい地域社会を支える生活道路や歩道の整備などが徳に重要だと考えます。2013年度の高速道路整備費は234億円で2009年度の2.3倍の増加に対し、高速道路を除く道路整備費は約36%も減少しています。人口減少、高齢化社会の到来、第3次産業にシフトする産業構造の変化、大企業の多国籍化に伴う生産拠点の海外移転など、物流を取り巻く環境は激変しており、高速道路の必要性は下がるばかりです。中止を含め、高速横浜環状道路計画の抜本的見直しが必要です。

カジノ誘致は言語道断
政策での暴挙といえる誤謬はカジノの誘致の問題です。カジノは、持統天皇の時代から禁止されている賭博であり、犯罪です。決算特別委員会で政策局長が「カジノにより、ギャンブル依存症、青少年への影響、暴力団等の関与、マネー・ロンダリング、地域環境への影響が懸念される」と答えています。アベノミクスに乗り、山下ふ頭再整備に合わせてカジノを誘致することは、言語道断であって、あってはならないことだと思います。

新市庁舎建設計画は白紙撤回を
市長は、東京オリンピックに訪れた国内外の要人などに横浜を売り込むため、プレゼンテーションの場が必要だとして、新市庁舎建設計画を前倒しをしました。新市庁舎建設は、整備費に加えて土地代、移転費用、関内地区振興等で総額1,000億円を超す大事業です。いまの計画を白紙撤回し、将来の横浜のあるべき姿について市民的な討議を重ねて、必要な市役所のあり方を検討すべきです。

相変わらずの大企業中心の経済政策

反対理由の第3は、相変わらず大企業中心の経済政策であったことです。
市長は、新中期計画において、横浜の成長をけん引する経済の実現を掲げています。しかし、世界的なモノづくりの拠点が中国、東南アジアに移った現在、市長の横浜経済に対する発想は、世界の工場であった20世紀の日本の延長線上としか思えません。21世紀に求められる横浜経済は、中小企業、中でもその90%を占める小企業を中心に置いた市域内の経済振興です。
決算特別委員会でも取り上げましたが、先進国との二国間貿易で常に日本が輸入超過になっている代表的な国はイタリアとフランスです。輸入品の主なものは、ワインなど飲料、農産物、バッグ、アクセサリー、履物、小物などの雑貨類、ファッション製品などです。これらは、地域資源を生かしたホンモノ指向で文化度が高い地場産業製品です。その担い手は小規模な専門業者であり、小企業です。横浜にも、スカーフやクラシック家具、芝山漆器、ハマ焼など、世界に誇れる伝統工芸、さらには日本の高度成長を支えてきた町工場の高い技術があります。イタリアやフランスの地場産業振興政策を手本に、地域の個性を生かし、新たな独自性を持った横浜経済を築くべきです。

子育て、福祉施策への大胆な投資なし

反対理由の第4は、子育て、福祉施策への大胆な投資がなかったことです。
横浜の市税収入の特徴は、個人市民税の占める割合が高いことです。2013年度決算では、個人市民税は法人市民税の5.2倍です。ところが、今後、個人市民税の主な納税者である生産年齢人口が減っていきます。生産年齢層、中でも子育て世代の生活を支え、可処分所得を増やすことが横浜経済の大きな下支えになります。
子育て世代のための施策として、本市が他の自治体に比べ一番遅れているのは子育て支援策です。将来の横浜のために「大胆な投資」をする必要があるならば、子育て施策にこそ投資をすべきです。
小児医療費助成の対象が小学校一年までにとどまっているのは、県内の19市のうち横浜と川崎市のみです。川崎市は拡充を検討するとしています。林市長は、その必要性を認めながら、「多額の予算を必要とする」ために実施に踏み切れないと述べています。対象を一学年拡大するには必要な額は9億円です。2013年度一般会計歳出決算額の0.06%に過ぎません。市長の決断さえあれば、実施は十分可能です。
中学校給食についても同様です。堺市が中学校給食の開始を決め、政令市で実施もその予定もないのは、ついに横浜だけになりました。
2013年度は、国民健康保険料の算定方式見直しで、約3割の国保世帯の保険料が上がりました。特に子育て世代を直撃しました。この引き上げは予め予測できたにもかかわらず、本年度ようやく減免措置を行いましたが、この減免措置を今後とも継続することを求めます。

福祉パス有料化の一方で費用弁償復活
障害者が提示するだけでバス・地下鉄に乗れる福祉乗車券、通称「福祉パス」を有料化したのも2013年度です。年間1,200円とはいえ、低所得層の多い障害者には大きな痛手です。福祉パス有料化実施と同じ10月に、議員の費用弁償が復活しました。福祉パス有料化と費用弁償復活に賛成された議員の方々は胸が傷まないのか、不可思議でなりません。

防災政策が軽視

反対理由の第5は、防災政策が軽視されたことです。
今年は、8月の広島豪雨災害や今年の台風18号19号を含め、これまでとは異質で過激な災害が頻発しています。台風18号では、中区と緑区での土砂崩れで2名の市民が亡くなられました。その後、市は25年かけて行う崖地の調査を急きょ3年に変更しましたが、尊い命が犠牲にならないと早急な対策を取らないのか。災害から市民の命を守ることを最優先にすべきです。近未来的に巨大直下型地震が首都圏を襲うと予測されています。特に、老若男女を問わず瞬時に危険を知らせることのできる同報系防災行政無線を、早急に全市に設置することを求めます。
2013年度決算では、大手ゼネコン奉仕の大型公共工事として、横浜環状道路や南本牧ふ頭整備だけでも392億円が投入された一方、災害に強いまちづくりには緊急道路に位置付けられた横浜環状道路整備を除くとわずか81億円にすぎません。災害に強いまちづくりにこそ重点を置くべきです。

地方自治体の任務は住民の命と暮らしを守ることです。その任務に照らし合わせた時に、到底2013年度決算を認定することはできません。以上で討論を終わります。


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