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■「議案等反対討論」 あらき由美子議員(2013.12.26)

私は日本共産党を代表して討論します。

企業支援・ハード整備中心、市民の暮らしが後景の中期計画

まず、市第92号議案 横浜市中期4か年計画の策定についてです。
この中期計画を策定するにあたって、その基本となっているのは2006年に策定された基本構想です。この基本構想には横浜市の都市像として「市民力と創造力により新しい「横浜らしさ」を生み出す都市とあり、「横浜は平和や人権の尊重を基調として」と最初に書かれています。ところが今回の中期計画には平和や人権の尊重という視点が基本的に欠落し、政府の「骨太方針」「日本再興戦略」の焼き直しが目立つものとなっています。市長は中期計画素案発表の記者会見で、「安倍総理が新しい経済政策を推進なさってきて、私としては大変評価できる」「このチャンス、市債の発行の考え方も変えて、やるべきことをやる」「基礎自治体こそが、国の成長を支えている」等と述べています。こうした認識で提案された中期計画は、安倍政権の成長戦略をそのまま横浜で具体化した内容であり、これでは横浜の展望は開けません。
今回の中期計画での基本認識は、未来に向けて解決すべき課題として、少子高齢化、生産年齢人口の減少、さらには都市インフラ・住宅ストックの老朽化を掲げています。その時代認識は適切です。現行都市マスタープランにおいても「将来の人口減少は避けて通れないため、今の時点から、将来の市街地の縮減を想定した取り組みに着手します」と市街地のコンパクト化を打ち出しています。ところが中期計画のまちづくり戦略においては、国の成長戦略、首都圏の活力を取り込んで「さらなる飛躍に向けたチャンス」と位置づけ、経済成長のためのインフラ整備に大胆に投資して都市の拡大を指向しています。まさに、時代認識とマスタープランとも真向から対立するものです。
市民意識調査の結果から、市民が求めているのは、「都市の拡大」や市長のいうメッセージ「人も企業も輝く横浜」ではなく、「地震などの災害対策」「病院や救急医療など地域医療」「防犯対策」「高齢者福祉」など安心安全に暮らせることです。今回の中期計画は、企業支援やハード整備が中心で、市民の暮らしの視点は後景に追いやられているとわが党が本会議で指摘した点について、市長からまともにお答えいただけなかったことはとても残念です。

横浜経済をゆがめ、ギャンブル依存症へ突き進めるIR型カジノ

個別問題で特に重大なのは、カジノを含むIR誘致です。
国の成長戦略にのり、今回の中期計画に盛り込まれているカジノを含むIRについては、この中期計画素案に寄せられた市民意見では反対意見が多かったにもかかわらず、シンガポールなどの例を出し幻想を抱いて進めようとしていること自体が問題です。神奈川新聞や朝日新聞などが実施した世論調査でも、反対6割、賛成3割という実態でした。
また、先日の新聞報道によれば、米国企業を中心にする在日米国商工会議所がカジノ合法化法案の早急な成立を求める意見書を発表し、そのねらいは、日本でのカジノ合法化を見越して、すでに米・ラスベガスのサンズ、MGMなど外国の巨大カジノ企業が日本進出に意欲をみせ、誘致自治体に対して巨額の投資話を持ちかけているということです。しかもカジノ総収入にかける税率は「10%」と、他国の例と比べても相当に低い税率を要求し、カジノ施設内でのクレジットサービス解禁を求め、客をどこまでものめりこませる手はずをとろうとまでしています。
このような事実が報道されている以上、アメリカ・カジノ資本の思うようにされ、横浜の経済をゆがめ市民をギャンブル依存症へ突き進めるような危険なカジノ誘致については、ただちに中止の決断をすべきです。
カジノ誘致を掲げる中期計画は抜本的に見直しすべきであり、賛成できません。

少人数学級、中学校給食を盛り込まない教育振興基本計画

次に市第93号議案「第2期横浜市教育振興基本計画の策定について」です。
少人数教育の推進は、教育の質の向上とともに、教職員の多忙の解消としても重要です。ところが、今回の基本計画には35人学級拡充について明記されていません。
昨年度市教委が行った教職員の実態調査報告書には、「授業終了後は会議や打合せ、部活動等の業務が優先され、『授業準備』『教材研究』『成績処理』など一人で対応できることが後回しになり、終業時刻後の対応となる。やることが多く、子どもに直接関わる時間が取れない。ノートやテストの採点は平日の夜遅くか休日に行うことが多い」とあり、教職員の勤務日一日当たりの業務時間の平均は11.45時間と長時間であることが明らかになりました。
教育委員会は、このような教職員の過重な労働実態を把握していながら、教員を増やして少人数学級にするなどの抜本的な改善策をとっていません。
中学校の昼食対策では、相変わらず家庭弁当を基本とし「中学校給食実施」がないこと、国の成長戦略に謳われているグローバル企業の担い手を育成し、ある種の英才教育であり、選別教育の強化である「グローバル人材の育成」を進めるとしていることなどの問題点について、今議会でわが党は教育長に質しました。
ところが、成長著しい中学生にこそ食育の点でもふさわしい中学校給食の実施については、文部科学大臣が国会で「学校給食の普及、充実」と発言しているにもかかわらず、教育長は「設置者が決めること」として国の方針にすら従わないという異常さがみえました。
グローバル人材の育成については子どもを平等に扱う公教育をゆがめることが危惧されるという点についての答えはありませんでした。こうした教育長の態度は横浜の子ども達を大切にしているとは到底思えません。
これらの理由から、この教育振興基本計画には反対です。

教育行政への首長の介入に道を開く危険性

市第98号、101号、102号議案「横浜市教育委員会教育長の給与、勤務時間その他の勤務条件に関する条件の全部改正」はじめ2件の議案については、いずれも国の地方教育行政法が改定されたのに伴う条例改正です。
法改定は、教育行政の責任の明確化と称して、教育委員長と教育長を一本化し、首長が直接任命する新教育長を教育委員会のトップにするものです。その一方で、教育委員会の教育長に対する指揮監督権は奪われます。
また、地方自治体の教育政策の方針となる「大綱」を首長が決定するとしています。「大綱」には、「学校統廃合を進める」「愛国心教育を推進する」など、教育委員会の権限に属することまで盛り込むことができ、教育委員会にその具体化をさせる仕組みとなっています。これでは、教育委員会を首長任命の教育長の支配下に置き、教育行政への首長の介入に道を開く危険性を持つことになりかねません。
横浜の教育行政のあり方について、私たちは危惧を抱いています。それは教育行政への政治介入問題です。市長は昨年の市長選挙の出馬の際、自民党から推薦を受け、その時に締結した政策協定の中に愛国心の育成などを掲げた改正教育基本法の精神に基づいた教科書、つまりは育鵬社版の教科書の採択に向けて取り込むこと、「正しい歴史認識に立った領土教育」の推進など教育内容にかかわることが盛り込まれていると報道されています。
これまで自民党市会議員団は、市教育委員会に対し、副読本「わかるヨコハマ」の朝鮮人虐殺の文言の削除を求め、竹島を扱った絵本「メチのいた島」の作者による読み聞かせを2つの小学校で実施させ、学習指導要領を逸脱した領土教育を強要させました。
今回の法改定によって、こうした横浜における教育行政の異常さがさらに拡大されることを憂慮します。条例化は法の具体化であり、容認できません。

小児医療費、学童保育・・・市民の切実な要望に耳を傾け、請願の採択を

次に請願についての不採択についてです。請願第11号「消費税増税の撤回と再増税の中止を求める意見書の提出について」、請願第12号「学童保育の充実・発展について」、請願第14号「横浜市立中学校における給食の実施について」、請願第15号「小学校給食の直営存続等について」、請願第16号「市予算による少人数学級の拡大等について」、請願第17号「子どもの医療費助成拡充について」、請願第18号「子ども・子育て支援新制度の拡充等について」、請願第19号「市立保育所の存続と横浜の保育の充実について」。この8件の請願は、いずれも市民からの切実な要望であり、市が今後進めようとする中期計画に盛り込まれて当然の施策もあります。
学童保育の充実や、中学校給食の実施、少人数学級の拡大、子どもの医療費助成など、子育て施策の要望が多いというのは、市の予算がこれらの施策に十分に使われていないからです。
特に、子どもの医療費助成制度の拡充については、公明・民主・結ぶ会の各会派は今年の決算特別委員会でも取り上げ、早期実現を求めていました。この請願を審査した常任委員会では、請願内容のすべてを採択できなくても所得制限をなくすとか、一挙に中学3年生まででなく段階的に進めることは検討すべきと、採択を主張した議員もいました。ところが公明・民主の議員は一言の発言もなく、結ぶ会は「中学校3年生まで拡充するのは無理がある」という意見で不採択としました。
市の中期計画には、小児医療費無料化のあり方について検討が必要という文言が入っており、市長はこの制度の意義や有益性は認めています。ところが、市長は財政上の理由から、こうした市民の切実な要望を実現しようとしません。
学童保育の充実・発展については、市の人口の約1割近くの32万4000人の方たちから寄せられている要望です。具体的な内容は、運営費補助金の増額と学童保育の施設を市の責任で用意してほしいというものです。
子育て支援として、この間市長は、認可保育所を中心に待機児童解消に力を入れて建設を進めてきました。そして、留守家庭児童のための放課後の居場所として全ての小学校ではまっ子ふれあいスクールから放課後キッズクラブへの転換を進めるとともに、学童保育の耐震化や面積確保等のための分割・移転を進めるという方針を中期計画にも盛り込んでいます。
しかし実態は、南区にある別所学童クラブは耐震診断を受けた結果、耐震性がないと判断され、新しい施設を探していますが、いまだに立地条件や家賃等の問題で施設が見つらず、安全が確保さていません。
また、今年の11月に学童保育連絡協議会が作成した「子ども・子育て支援新制度に向けて」の資料によれば、支援事業の実施を基準に照らしあわせると面積基準を満たしていないクラブが半数近くの90あり、120クラブが41人以上の児童がいるため分割をしなければならないことになるとあります。この資料を持って学童保育連絡協議会の皆さんは、各会派に説明に行かれたとも聞いています。
これらのように、学童保育の耐震化や国の基準に見合った施設にするためにも、この請願内容を採択するのは当然です。
ところが審査した常任委員会では、自民・公明・民主・結ぶ会の議員は学童保育には「まだまだ課題があると認識している」と主張しつつ、「施設を市の責任で用意するのは無理がある」「この内容はあえて採択は必要ない」と、不採択にしました。
各会派の議員は、地元地域での学童保育クラブとの懇談会などを通じてその実態を見たり聞いたりし、請願内容については承知しているはずです。それにもかかわらず、どうして不採択とするのでしょうか。施設を市の責任で用意することが、子どもたちの命や成長を守ることにこそなるのではありませんか。
小児医療費や学童保育の請願審査の議論に表れているように、議員が市民の切実な要望を拒んでいる実態となっています。この態度こそ改めるべきです。
これらの理由から8件の請願の採択を主張し、私の討論を終わります。