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Gikai 議会での質問

【2006年度第2回定例会】「『市第3号議案 横浜市立保育園廃止処分取消請求事件に係る控訴の提起』に対する討論」荒木由美子議員

 

「保育は人」という判決の趣旨を認識し、控訴の提起はやめるべき

私は、日本共産党を代表して、「市第3号議案 横浜市立保育園廃止処分取消請求事件に係る控訴の提起」について反対の立場から討論いたします。


  市長は、2004年4月1日から、丸山台、鶴ヶ峰、岸根、柿の木台の4つの市立保育園の廃止・民営化を、その前年2003年12月の第4回定例会の議決を経て実施しました。


  今回の判決は、児童福祉法第24条「保育所において保育を受ける権利」を侵害したことを認め、議会の議決から3ヶ月で民営化を実施したことは「その裁量の範囲を逸脱・濫用したもので、違法である」という判断を下したのです。


  市長は、市立保育園を民営化するにあたり、2003年の児童福祉審議会からの意見具申の中で、「今後の重点保育施策」の一つに市立保育所の民営化が位置づけられたことを、民営化の根拠としてきました。


  児童福祉審議会での意見具申では、民営化を実施するにあたっては「運営主体の変更による子どもたちへの影響について十分に配慮していくことが保育に携わるものの義務」とあり、4項目の留意事項が明確にされていました。


  しかし、その4項目のどれも留意されたとはいいがたく、しかも今回の判決にもあるように、「保護者の不安を払拭すること」については、市長は最後までその努力どころか聞く耳すら持ちませんでした。


  保育の専門家ではない市長が、児童福祉審議会という専門機関に今後の保育施策について投げかけ、審議会の委員の判断もあおぐことなく、「公立保育園の民営化」という言葉だけをとらえて民営化を強引に進めたこと自体、許されることではありません。しかもあろうことか、市長は議会やマスコミ等を通じて、「多様な保育ニーズに応えるため」「子どもの成長が早い」ということが民営化の目的として言い続けてきましたが、この点についても判決では「多様なニーズに応えることと、民営化とは必然の関係はない」としています。児童福祉審議会の意見具申も同様です。


  市長の判断の誤りによって、犠牲になっている子どもたちのことを考えたことがあるのでしょうか。結局、公立保育園は民間に比べて人件費が高いというコスト論だけを描き、民営化こそがふさわしいと拙速な判断をしたことが、市長の誤りだったことをここできちんと認めるべきです。


  民営化の対象となった公立保育園で、子どもたちが健やかに成長できるように考えることも「市長の責務」なのです。しかし、市長は民営化を実施すると決めた後の予算特別委員会連合審査会で、「現状に保育園に入っている子と、これから入りたい子を同じ土俵に乗せたらだめなんです。今入っている子どもたちに対して影響を与えてよいのですか。そういう権利侵害をしてよいとは書いてありません。もう一度お答えください」との私の質問に対して、市長は「もう今のご質問といいますか、ご意見に如実にあらわれています。一たんつかんだ権利は放さない」、こう答えていました。市長は、「既得権は認めない」というニュアンスで言い放ち、当初の発表どおり2004年4月1日には「民営化は実施する」という姿勢を最後まで崩しませんでした。


  保護者が市長と直接会って話し合いたいと何度も働きかけてきたにもかかわらず、市長は拒否し続けました。市長のこういう姿勢そのものが保護者の気持ちを逆なでし、裁判でもその事実がはっきりと認められたのですから、この際ご自分の犯した過ちを、ここで冷静になって認めるべきです。


  私自身、横浜市の保育士として子どもの成長・発達に関わってきた立場から、一言申し上げます。公立であれ民間であれ、保育士というプロである以上、子どもの健やかな成長を願わないものは誰一人としていません。私が市会議員になろうと決断したのは、今から14年前、1歳と3歳の子どもを育てながら保育園で働いていた時です。保育をする子どもたちへの予算が毎年削られ、絵を書く画用紙一枚・クレヨン一本でさえ、思う存分与えることができなかった、これではますますひどくなっていく、横浜の保育を将来の子どもたちのために、もっと良くしていきたい、それが原点でした。


  しかし、保育の現状は当時よりもっとひどくなっています。公立保育園の運営経費が削られるだけでなく、今年の予算から国の補助と重複している部分について、民間保育園に対する法外扶助費も削減する提案も行ないました。このことについて、私立園長会は、「今回の案は、延長保育へシフトさせることを意図し、いわば保育の根幹部分である原則時間保育および長時間保育の補助を削減し、延長保育部分にまわすというものです。土台である根幹部分が削られれば、延長保育その他の特別保育も困難となります。いわば今回の案は保育の土台を崩す危険すらあるものといえます」と厳しく指摘し、「横浜市においては、法外扶助を削減するのではなく、拡充してもらいたい」など15項目にわたる切実な要望書を2度にわたって、市長あてに提出していました。しかし、この点についても市長は園長会との合意もなく、4月実施を強行しましたが、このことも断じて認めるわけにはいきません。


  また、保護者や保育園関係者からの抗議のファックスやメールが議員に届いていたにもかかわらず、当時の福祉局長の「保育の質および職員の処遇低下にならないように配慮している」との答弁を鵜呑みにして、削減を認めた議会にも責任があります。私立園長会で行った最近のアンケート結果から、平均で3割の法外扶助費の削減が見込まれ、それを見越してそれぞれの園では職員の退職者を募ったり、パートの時間を短くするという対応を余儀なくされています。これは保育の質の低下であり、職員の処遇の切り下げそのものではありませんか。事実をきちんと調査もせず、市長サイドの言い分のみを聞いて安易に議決をしている議会の責任も問われて当然です。


  児童福祉法の第2条に「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」とあります。この法律によって、保育をする現場の職員はもちろん、横浜市としても、すべての児童の健やかな成長を促すために責任をもたなければならないのです。


  しかし、中田市長の行為は、親や児童が自ら足を運び直接保育園を見学し、また園長や保育士らから説明を受け、「この公立保育園に入園したい」と希望して入園した子どもの健やかな成長を妨げ、児童福祉法の趣旨に反するものです。


  今回の民営化による影響は、子どもたちが成長し続けても心の奥深くに傷をつけたまま残っているのです。しかもその傷は目に見えないからこそ、修復することは大変なことなのです。その重大さに気づくべきで、「保育は人」という判決の趣旨を、市長はいまこそ認識し汲み取るべきです。
  自治体運営をつかさどる市長の誤った判断によって、影響を受けた子どもたちをはじめ、今回の裁判を提起した原告である保護者の気持ちを理解するならば、控訴の提起はやめるべきです。


  私がこれまで述べた、児童福祉法の趣旨をはじめ、民営化を強行したことによって、少なくとも今回の原告である68人に被害を与えたことを理解できる方たちであれば、議会として控訴をやめることが、今こそ求められています。また、来年度も公立保育園を4園民営化すると発表していますが、今回の判決を議会としても重く受け止め、わずか1年で民営化を決め引継ぎ期間を含めても6ヶ月ですべての職員が入れ替わるというやり方は、見直しすべきです。市立保育所の民営移管は、もっと時間をかけて、児童心理士・小児科医など専門家の意見を十分に聞き、また民営化された児童や保護者の意見に率直に耳を傾け、より一層慎重に対応すべきことなのです。


  子どもは年齢が小さければ小さいほど自分の気持ちを表す手立てがありません。しかし年齢が低ければ低いほど、環境の変化における影響は心理面に大きく作用します。そのことを示すべく、民営化後の子どもたちを取り巻く環境や心理状況の変化が、今回の判決文の中に19ページに渡って別紙に綴られています。「赤ちゃんがえりをし、指をなめたり、服をかむことが多くなった」「かんしゃくを起こしやすくなり、先生の名前を聞くだけで、大泣きをするなどの状況になった」などなど、それを読んでいただければ、子ども・保護者・そして保育士がどんなに大変な思いをしたか、受け止めることができるはずです。議員の皆さん、お読みになったでしょうか。


  控訴の断念を望んでいる傍聴者や意見をよせてくださった市民の声に耳を傾け、この議案についてはぜひとも賛同しないように心から訴えて、議案に対する私の反対討論を終わります。