申し入れ等
2015年9月10日

2016年度予算編成にあたっての申し入れ

2015年9月10日

横浜市長 林 文子様

日本共産党横浜市会議員団
団長 大 貫 憲 夫

2016年度の予算編成に当たり、横浜市民にとって真の豊かさを実感できるまちづくりのため、地方自治の本旨に基づき住民本位の予算となるよう申し入れをするものです。

人口減少社会に向けた大都市横浜の「まち」づくり
日本の人口は2010年から本格的な人口減少が始まりました。本市人口においても2019年をピークに毎年減少し、2060年には中位推計で320万人、下位推計では290万人に減少するとされています。この人口減少社会をどのようにとらえ、将来に向けてどのような「まち」づくりをしていくのかが横浜市政の根本問題として問われています。横浜において、これまでの経済成長戦略の延長線上で都市計画を進めるのか、それとも、人口減少を正面に据え経済成長戦略から脱却して真の豊かさが実感できる「まち」づくりを目指すのか、そのどちらを選択するのかということです。
これまでの経済成長戦略のもと、急激な人口増によって巨大化した都市横浜にとって、自然と歴史の回復、災害に対する安全性の向上、密集市街地をはじめとした居住環境の向上、公園緑地の拡充、公共施設のゆとりの確保、さらには建物の低層化を図り都市景観の回復等が求められています。不可避的な人口減少という条件を能動的にとらえて、現存する諸問題を計画的に解決する絶好の機会にすべきです。人口減少という都市としての大きな転換期に直面しているいまこそ、発想の転換が必要です。

住民福祉の充実した豊かな横浜を
市長は、住民福祉を充実させるためにも、その基盤となる横浜経済の活性化による法人税収入など、税収源の涵養が必要だと強調しています。アベノミクスの成長戦略の波に乗り、「未来への大胆な投資」として、みなとみらい21地区に新たなMICE施設の整備や山下ふ頭へのIRカジノ誘致、エキサイトよこはま22、新市庁舎建設とそれに伴う関内・関外地区の再開発など都心臨海部のインフラを整備し、国際観光都市として国内外から集客し、都市間競争に勝つための「まち」づくりを進めています。その構想は、国際競争に勝ち抜くため、今後日本が全国的に人口減少しても、リニア中央新幹線によって東京・名古屋・大阪を結びつけ、世界最大の大都市圏、つまりスーパー・メガリュージョンを形成し、人口減少をカバーすることによって、圧倒的国際競争力を確保しようとする安倍政権の経済戦略に基づくものであり、首都圏に位置する日本最大の政令指定都市横浜として、その一翼を担うものです。
しかし、これらのインフラ整備のための大型公共事業は、いわゆる大手ゼネコンの仕事興しであり、横浜経済への波及効果はほとんどありません。しかも、市長のいう「未来への大胆な投資」によって、華やかな横浜をつくりあげても熾烈な都市間競争に勝てる保証は何もありません。経済活性化どころか競争に負け、残るのは莫大な財政負担と膨大で不要なインフラ群となる恐れは否定できません。人口減少社会において今後、ゼロ成長のもとでも横浜経済を持続・発展させ、市税収入を確保するために求められているのは、本市の住民が生き生きと生活し、それぞれの人生を豊かに過ごすための福祉中心のインフラ整備への「大胆な投資」です。
現在、本市の人口動態をみると、子育て世代がさまざまな理由で市外に流出しています。実際、党市議団が昨年行った市民アンケートでも、子育て世代が求めているのは保育所の増設、小児医療費助成制度の拡充、中学校給食の実施、少人数学級など多岐に及んでいます。本市に根づく施策を充実し、この子育て世代・働き盛りの若い人たちが第2子、第3子と安心して産み育てる環境を整備することが必要です。そのことにより本市の人口減少率を低下させることが可能になります。
超高齢社会を支えるためには、お年寄りが安全で安心して生活するためのさらなるインフラ整備が必要です。元気な高齢者が気軽に社会参加するために、身近な生活道路や歩道、駅など主要施設のいっそうのバリアフリー化、敬老パスの継続とコミュニティバスの運行などが必要です。さらに、安心できる介護・医療のために特別養護老人ホームや養護老人ホームなどの整備を進めなければなりません。支援施設を増やせば、当然マンパワーが必要になり雇用が増えます。ヘルパーなどのマンパワーについては、国に対し賃金補助を増やすよう要求し、本市独自でも上乗せするなど、ゆとりある生活ができる賃金を保障することが必要です。

横浜の資源・富を生かした経済政策を
今後、生き生きとした横浜の「まち」を維持発展させ、支えるのはしっかりとした横浜経済です。
人口減少社会の中で横浜経済を支えるためには、地域循環型の経済政策に力点を置かなければなりません。そのためには、どれだけ生産年齢人口を確保するかが決め手です。また、60歳以上で定年を迎えたまだまだ元気なシニア層も貴重な人材です。そして、青年や女性を含め、そのマンパワーを横浜経済に結びつけることができるのが、地域に根差した小規模企業であり、なかでも従業員5人以下の小企業・業者です。
政府は昨年6月、小規模企業が地域経済の担い手、雇用の創出・維持に大きな役割を果たしていることに着目し、事業の持続的発展を図る施策として、国や地方自治体が連携・協力し講じるよう求めた小規模企業振興基本法を制定しました。同法は、地方自治体にも小規模企業の振興について「区域の諸条件に応じた」施策の策定とその実施の責務を課しています。その要請を正面に受け、早急に有効な施策を提示しなければなりません。
市内事業所の約90%を占めるのが小規模企業です。企業誘致による市外からの企業立地は、歴史的に集積されてきた産業がある本市にとっては、市内経済、産業を補完するものであっても主役ではありません。横浜市としても、早急に同法に基づいた小規模企業の実態調査を実施し、同時に地域循環型経済での存在意義や役割を明らかにし、小規模企業を本市経済の主役に位置付けることが必要です。そして、住宅リフォーム助成制度など地域循環型の仕事興しのための施策や、貸工場や機械など営業インフラに対する補助制度、特に、小企業・業者向けの生活支援融資制度、営業不振によって生じた国保料滞納などに対応する相談窓口の設置など、生業として永続して営業ができる施策の策定が必要です。
横浜経済の活性化は、戦後の日本のモノづくりを支えてきた中小企業群の優れた技術、横浜に残る自然環境、地域に根をはり生活する370万市民、そして、幕末の開港の舞台となった文明開化の地である横浜の歴史・文化などの資源・富を生かし切ることにより、豊かな横浜経済を構築することです。

地方自治の立場に立ち、市内で働く労働者を守ること
わが国は世界第3位の経済大国です。そこには膨大な富が毎年生み出されています。ところが、横浜で、わが国で生まれた富が、中小企業や庶民に行き渡っていません。そこに、現在の横浜経済不振の根本的な原因があります。大企業が儲かればそのおこぼれが地域に回るという、いわゆるトリクルダウン経済が破たんしているのです。本市の経済対策で必要なのは、何といっても市内の消費購買力を引き上げることです。そのためにも、市内で働く労働者の賃金を上げ、可処分所得を増やすことが必要です。
少なくとも、指定管理者をはじめとする横浜市にかかわる事業によって雇用される労働者は正規雇用を基本とし、労働者の賃金と雇用条件の引き上げを行うために、公契約条例を制定することです。さらに、ブラック企業を規制する条例を制定し、過酷な労働条件に苦しむ若者を救うことです。横浜市は全国最大の政令指定都市です。政府が国民に悪政を強いているいま、経済対策においても地方自治の立場に立ち、市内で働く労働者を守ることが自治体の責務です。
 昨年4月強行された消費税の8%への税率アップとアベノミクスによる円安に伴う物価上昇は、市民生活と市内中小企業を直撃し、市内の消費購買力を劇的に低下させました。安倍自公政権は2017年4月に消費税率を10%に引き上げを行うと宣言しています。市内事業所の99%を占める中小企業の営業を守り、市内の消費購買力を低下させないためにも、国に対し消費税率の再引き上げに反対し、同時に当面5%に引き下げるよう横浜市として強力に申し入れを行うべきです。

区役所の権限強化と機能の充実を
少子高齢化社会において、子育てや介護の充実を具体的に図る上で、区役所の役割が重要になります。区役所は医療、福祉、教育、雇用、産業、住宅、環境、交通など様々な地域課題を住民自治の立場から解決する重要な役割を持ちます。国の第30次地方制度調査会においても、「住民に身近な行政サービスについて、住民により近い単位で提供する『都市内分権』により住民自治を強化する」との答申が出されています。その指摘は適切です。
本市においても内外の知恵を集め、区の住民自治を拡充しなければなりません。そして、区の権限と機能の強化、特に、生活支援、福祉サービスなどへの正規職員の人員増強、超高齢社会を公衆衛生の面から支える保健所の復活、小企業・業者が生業として営業が続けられるための経済課の設置、近年の気候変動による豪雨や地震など災害から地域を守るため防災体制の強化、また、今後急速に増える住宅の老朽化等の相談に対応する建築事務所の設置等などの機能及び権限の強化を緊急に求めます。

平和を発信する「まち」横浜に
人口減少社会における横浜の富は、横浜がもつ豊かな文化、歴史、自然・環境と、そこに市民が根を下ろして生活することであり、その大前提となるのが平和です。
いま、日本を再び戦争する国にする戦争法案・安保法制が参院で審議されています。戦争法案は、横浜市にとっても深くかかわっています。安全保障関連法案、いわゆる「戦争法案」のもとになった「日米防衛協力のための指針」には、他国有事への対処では、日本が攻撃を受けていないにもかかわらず「地方公共団体の権限・能力並びに民間が有する能力を適切に使用する」として自治体・民間企業の戦時動員が明記されました。
横浜港には、東京ドーム球場の約11倍の面積を擁する米軍基地ノースドックが、みなとみらい21地区の目の前にあります。また、巨大艦船が接岸できる南本牧ふ頭、みなと赤十字病院などの医療機関、石川島播磨のような民間の造船施設、艦船修理能力があります。日米両国が一級の後方基地として着目するのは必然です。横浜市民の安全のためにも戦争法案を廃案にしなければなりません。
同時に国際都市横浜として平和な横浜港のためにも、危険な米軍基地ノースドックを一刻も早く返還させなければなりません。平和市長会の会員であり、国際ピースメッセンジャー都市の副会長都市を経歴に持つ横浜市として、戦争法案反対の立場を内外に表明することが必要です。
以上、来年度の予算編成に当たり、その基本的な方針について日本共産党横浜市会議員団として考えを述べさていただきました。真摯な検討を期待します。


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