申し入れ等
2023年11月30日

「第9期横浜市 高齢者保健福祉計画 介護保険事業計画 認知症施策推進計画」素案に対する意見提案

2023年11月30日

横浜市長 山中竹春様

日本共産党横浜市議団

団長 古谷やすひこ

日本共産党は医療・介護・障害福祉・保育など、命を守る「ケアに手厚い社会」をつくることを掲げています。この立場から、「第9期横浜市 高齢者保健福祉計画 介護保険事業計画 認知症施策推進計画」素案に対する意見を述べます。

介護保険法は、2000年に施行されました。介護保険法成立当時、「介護保険制度は、介護を社会全体で支え、利用者の希望を尊重した総合的なサービスが安心して受けられる仕組みを創ろうとするもの」と当時の厚生省が監修した冊子『介護保険がはじまります』に書かれているとおり、介護保険制度は「介護の社会化」を目指して創設されました。多くの人がこれまでの家族介護からの解放、すなわち「介護の社会化」へと転換する「公的」介護保険制度の成立を期待しました。

介護保険は、要介護者などが「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行う」ことを目的としています(介護保険法第1条)。さらに、「国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする」とされています。介護が必要になった人に憲法25条1項の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障すること、その実現のために2項にある「社会福祉の向上・増進義務」を果たすことが本来の社会保障としての介護保険であると言えます。

今回、「第9期横浜市 高齢者保健福祉計画 介護保険事業計画 認知症施策推進計画」(2024年~2026年)を策定するにあたり、高齢者福祉の現状が抱える課題に向き合い、「高齢者福祉はこうなってほしい」という住民の要求や実態を反映した住民本位の計画にすることが重要です。介護保険法の理念に則り、お金の心配をすることなく、必要な介護サービスを必要なときに利用できること、また、自立困難や生活困窮であっても人として尊厳のある暮らしが送れ、市民が安心して生活できる計画にする必要があります。また、高齢者に関わる施策のほとんどが「介護保険頼み」となっています。認知症への対策も同様です。高齢者福祉計画をもっと拡充するよう、市でしっかり政策化することが本来の姿です。以下の点を踏まえた検討が必要です。

提案の第1は、保険料の負担を軽減し、支払える保険料にすることです。

素案では、「第9期計画においては、介護サービス利用者の増加等により介護給付費が増え、保険料が大幅に上昇」し、負担する保険額が月6600円~6700円となると計画されています。しかし、神奈川県内自治体の第8期介護保険料(第1号保険料の基準月額)は平均6028円であり、横浜市の保険額は突出しています。2022年度会計残額は、約155億円以上となる見通しです。今後、大幅な残金を出さず、第9期計画においては、保険料基準月額を6500円以下にすることが必要です。その財政確保のためには、一般財源の活用も必要です。また、第1号被保険者の介護保険料について、「第16段階の合計所得金額が2000万円以上の方」の年間保険料額を、所得に応じて段階を増やすなどの改定も検討する必要があります。さらに、市として国に対し、介護保険財政における国庫負担割合を大幅に引き上げることが求められています。

提案の第2は、低所得者への保険料減免制度の拡充です。

2023年3月に公表された横浜市高齢者実態調査では、介護保険のサービスを全く利用していない理由として、「介護サービスを利用したいが、経済的な負担が大きい」と8.0%が回答し、2013年調査の2.3%の3.4倍以上に増加しています。医療費の負担増や消費税10%の増税、マクロ経済スライド制による年金の削減に加え、異常な物価高騰など、高齢者を一層厳しい生活へと追い込んでいる状況が、介護サービスを利用したくても利用できない高齢者を生み出しています。また、同調査では、高齢者の経済的な状況について、「『大変苦しい』『やや苦しい』は 33.4%となっています。 “特養申込者”では『ゆとりがある』は3.0%、『苦しい』は 54.2%となっている」ことから、介護費用の負担が高齢者の生活をさらに圧迫していることが明確に示されています。特に、介護保険料の低所得者減免の基準については、単身世帯の年間収入見込額の150万円以下を180万円以下とするなどの改善措置が必要です。介護保険制度は、「応能負担原則」に基づき、高齢者の所得に合わせた支払い可能な額に設定することが求められます。市民税非課税者からは徴収しないことや年金からの天引き、未納者滞納者に対する制裁措置を廃止するなど、減免制度の拡充が必要です。

提案の第3は、「必要としている人が必要な時に入れる」特別養護老人ホームの基盤整備です。

低所得の要介護者にとって、比較的低額で入居できる特別養護老人ホームは安心できる第2の家、終の棲家であり、行政として居住の保障を行う必要があります。引き続き。待機期間が半年となるよう整備計画の拡充が必要だと考えます。また、特別養護老人ホームへの入所希望地域について、「現在の住まいの近く」が 48.9%と最も多くなっています。横浜市の特別養護老人ホームは地域的に偏りがあり、鶴見区などでは施設が少ない現状があります。地域の偏在をなくし、市内全域でバランスのある配置を求めます。

さらに、今回の「特別養護老人ホームへの適切な入所のための仕組み」の施策では、「(ア)経済的な理由でユニット型施設への入所ができない方への対策」である「施設居住費助成」を、生活保護の低所得者も入居ができる設定とすることが必要です。

日本共産党は、必要としている人が必要な時に入れるように特別養護老人ホームの整備数の拡大、待機期間をせめて半年以内となるよう提案してきました。2022~2025年の市の重点政策をまとめた中期計画では、10か月の待機期間を9か月に短縮することが掲げられていました。今回の第9期計画ではすでに9か月への短縮が達成されています。半年以内で入れる方は全体の7割まで改善されたと聞いています。さらに、待機期間を短縮できるよう、整備計画の拡充を求めます。

提案の第4は、介護労働者の賃金引上げと待遇改善を行い、人材確保によって介護サービスが確実に提供される体制づくりに市が責任を持つことです。

第9期横浜市の法定計画を実現するためには、人材確保が欠かせません。本市実施の2022年度高齢者実態調査では、あらゆる介護施設・事業所で人材不足、施設系は7割で人材不足です。施設職員の不足理由について、すべての対象施設で「採用が困難である」が8割以上を占めています。また、特養・老健・居住系・訪問通所系では、「離職率が高い」が2~3割となっています。介護職のイメージについては、ホームヘルパー・施設職員の回答は「給与水準が低い」がトップです。労働条件や労働環境の悩みや不満についての回答は、ホームヘルパーや施設介護職員では、「人手が足りない」が約6~7割と最も多く、次いで「仕事内容のわりに賃金が安い」が約5割となっています。

「介護労働」は誰でもできるわけではありません。1人ひとりの人生を支援する必要不可欠な専門職にふさわしい賃金の引き上げと待遇改善と専門性の確保が必要です。人権の担い手である介護労働者自身の人間らしい生活が守られなければ、笑顔で他者の権利を守ることができません。在宅ヘルパーなどの介護労働者の給与については国家公務員・医療職給与と同程度の水準を保障するなど、希望者は正規雇用とすることとし、国への働きかけとあわせ、市としてそのための財政支援をすることが必要です。

提案の第5は、市独自に加齢性難聴者を対象とした補聴器購入助成制度の検討を行うことです。

近年、難聴は認知症の危険因子の一つとされています。認知症予防や高齢者の積極的な社会参加を支援する目的で補聴器購入の助成制度が2022年末までに全国123市町村に広がっています。加齢性難聴者にとって、生活の質を上げるという観点で、補聴器の使用による一定の効果があるとされています。以上の課題認識を踏まえて、第9期計画策定にあたり下記の措置を講じることを求めます。

1.一般財源を活用し、基準額を軽減し介護保険料の軽減を図ること。また、「応能負担原則」に基づき、第16段階の合計所得金額が2000万円以上の方々の保険料段階を増やすこと。

2.介護保険料の低所得者減免の基準については、単身世帯の年間収入見込額の150万円以下を180万円以下とするなどの改善措置を行うこと。

3.生活困窮による介護保険料滞納者には、救済措置を講じること。

4.介護サービス利用料の負担軽減策を拡充すること。

5.特別養護老人ホームは、入所待ち期間をさらに半年以内に短縮できるよう整備すること。

6.特別養護老人ホームの新規整備については、地域の偏在をなくし、市内全域でバランスのある配置を行うこと。

7.「経済的な理由でユニット型施設への入所ができない方への対策」として、生活保護等の低所得者が特別養護老人ホームのユニット型でも入居ができるよう、施設居住費助成の充実を図るなど、低所得者の住まいの確保を盛り込むこと。

8.在宅ヘルパーなどの介護労働者の給与について、専門職にふさわしい賃上げができるよう、財政支援を行うこと。

9.認知症対策として、加齢性難聴者に対する補聴器購入助成制度の創設に向け、検討すること。

以上


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