申し入れ等
2024年2月26日

第8回全市線引き見直しには、気候危機対策と緑の保全・創出を最優先に据えることを求めます

2023年2月26日
横浜市長 山中竹春 様
日本共産党横浜市議団
団 長 古谷やすひこ

現在、横浜市は無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るためとして、都市づくりの基本的な考え方である「都市計画(都市計画区域の整備、開発及び保全の方針、都市再開発の方針、住宅市街地の開発整備の方針、防災街区整備方針整の4方針)」の改定素案の案と、その方針に即して、市街化調整区域(建物の建築などが制限されている区域)と市街化区域(建築の制限がない)とを区分する「線引き」の見直し(基本的基準案および基本的基準案に基づき選定した見直し区域の候補地区一覧)の案を公表し、市民意見の募集を行っています。

都市計画と線引き見直しの改定は、おおむね6年から7年に一度定期的に行うとしており、今回で8回目となります。2024年度以降に素案の策定、都市計画手続(公聴会・市都市計画審議会等)を行い、都市計画変更の告示に進むスケジュールとなっています。

私たちが、注目し重要だと考えている点は、市税制調査会のみどり税の答申にある「2014年から2019年にかけて緑地が417ha減少」していることと、その原因が「戸建住宅や集合住宅の建設」と指摘されていることが、今回の都市づくりの計画方針の改定によって改善されるのか、それとも更なる悪化を招くのかという点です。

また、深刻さを極める地球温暖化・気候危機を回避するために再生可能エネルギーの普及や省エネの促進、あらゆる分野の脱炭素化など大都市が果たすべき社会的な責任を十分全うできる方針になっているのかが重要な点だと考えています。

都市づくり方針に「環境」の設定は評価

今回の線引き見直しの方向性について審議され、改定案に盛り込まれた都市計画審議会からの答申では、都市の変化の兆しとして「気候変動に伴う災害リスクの増大」「脱炭素社会及び生物多様性保全の実現」が記されました。そして都市づくり方針は、経済・暮らし・賑わい・安心安全・環境の5つテーマが示されています。

環境に関わる方針には、「自然環境を身近に実感できるまちづくり」「豊かな水・緑を保全・創出するまちづくり」が掲げられ、気候危機に向けては、再生可能エネルギーや自立分散型エネルギーの利用促進が盛り込まれた脱炭素化に向けた建築・まちづくりの推進など「持続可能な未来につながる気候危機変動への対応」が方針とされました。

また、前回方針から引き続き青葉区の子どもの国周辺地区や金沢区の小柴・富岡地区など市内10か所を緑の10大拠点とし、まとまりのある緑地や農地、海や河川等を保全するとしています。この環境への新しい視点には同意できる点もあり、期待するものです。

緑の減少を止められなかった仕組みは、大本から見直しを

そもそも線引きの役割は「無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図る」ために「市街化区域と市街化調整区域に区分する」ことが目的です。しかし、保全すべきみどりの10大拠点の中には川井・矢指・上瀬谷周辺地区があり、旧上瀬谷通信施設跡地では、巨大テーマパークと物流拠点誘致のための大規模な土地改変が行われようといています。都市づくりの方針で確認された計画が守られず、緑の減少を止められない土地利用計画になっていると、指摘せざるを得ません。

方針改定案に即して修正された、線引き見直しの基本的基準(案)では、「市街化区域への編入を行うことが望ましい区域」及び「市街化区域への編入が考えられる区域」について、「地域の合意形成、事業実施の見通しが立った際に、地区計画によるまちづくり等と併せて、随時市街化区域に編入する」とされています。この「合意形成」の規定が、緑地破壊にもつながる大規模開発を誘導するツールとなる恐れがあります。合意形成された住民主体のまちづくり区域という市街化区域編入の条件づけは、外形上は「住民主体のまちづくり」とされていても、実質的には開発事業者の意向と地権者の合意によって、市街化調整区域であっても、住宅地、商業地として開発が押し進められる事態を避けることができません。こういう実態を、しっかり抑制していかなければ、都市づくりの5つの要素に規定した環境を守り切ることはできないと考えます。

人口減少で生み出される空間は自然環境再生に

横浜市は、高度成長期に多くの自然の破壊と引き換えに発展した大都市です。その結果、特に旧市街地の市民は、少ない公園面積や低い緑被率という劣悪な環境を余儀なくされています。人口減が進み、空き家対策が全市的な新たな課題となっています。人口減少で生み出される空間的なゆとりは、自然環境の再生にあてるべきです。そうすることで、市民の居住環境が向上します。

以上述べてきたように、改定案の環境保全が進む方針や、新たに記述された再生可能エネルギー、省エネの促進・脱炭素化についてはしっかり進めていただくことを要望し、緑の減少を止められない要因については、下記の通り、見直しを求めます。

  • 第8回全市線引き見直しにあたっては、気候危機対策と緑の保全・創出を、都市づくりの最優先課題に据えること。
  • 市街化抑制を基本とし、市街化調整区域から市街化区域に編入する際の「地域の合意形成」は、地権者の意向のみならず広く周辺住民・市民の合意形成を必須とする規定に改めること。
  • 上郷猿田地区を市街化調整区域に戻すこと。
  • 旧米軍上瀬谷通信施設跡地の開発は、貴重なみどりを守るまちづくりとする必要があるため、市街化区域に編入しないこと。

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