申し入れ等 ・ 見解/声明
2024年4月19日

教育長就任にあたり「いじめ」「不登校」「教員の未配置」等の 早期解決を進めるよう求めます

2024年4月18日

横浜市教育委員会 教育長 下田 康晴様

日本共産党横浜市議団 団長 古谷 やすひこ

教育長就任にあたり「いじめ」「不登校」「教員の未配置」等の
早期解決を進めるよう求めます

 
教育委員会として大きな問題と困難を抱える時期に教育長の任につかれたことに対して敬意を申し上げます。国の教育文化予算が先進国で最低水準にとどまっているなか、教育現場では深刻な問題が噴出しています。その一つ一つの問題に正面から向き合い、解決に向けた具体的な手立てを打つことが必要です。日本共産党横浜市議団としても、教育委員会をはじめ、学校や教職員、関係団体と力を合わせて、問題解決に向けて力を尽くしていきます。
横浜の教育をめぐっては3つの大きな問題があると考えています。いじめ、不登校、そして教員の未配置の問題です。どれも、現在困難の渦中であると思います。しかし、教育委員会が、子どもたち保護者・教職員と力を合わせて、当事者の声に耳を傾け、子どもの権利条約が掲げた「子どもの最善の利益」「生命、生存及び発達に対する権利」「意見表明権」「差別の禁止」の4原則を重視し進めていく決意をもって取り組んでいただけば、必ずこれらの問題は解決に向かっていくと確信しています。

中学校のいじめ自死問題 
徹底した再調査を行い、関係者に厳正な処分を 
今回の深刻ないじめ自死問題では、不適切極まりない教育委員会の対応が明らかとなってきました。いじめ自死が起きた現場への対応も、子どものその苦しみに寄り添った対応も行われていませんでした。自らが決めた「いじめ防止推進基本方針」に自らが従わないというずさん極まりない事態です。そして、いじめの事実を故意に見えなくした事態はあまりにも深刻です。再調査で問題を明らかにし、関係者に厳正な処分を行うよう求めます。

不登校といじめの関連調査を 
事実を正確につかめるものに
また、児童生徒の自死がこの10年で41人あったことが明らかとなり、いじめとの関連についての調査も行われることとなりました。2022年度の横浜市におけるいじめ認知件数は12,248件。不登校児童生徒は8,170人。ところが、教育委員会の調査報告では、いじめ要因の不登校は小学校で1人だけとなっています。どう考えても現場の実態と乖離しています。事実を正確に掴かめる調査に改善するよう求めます。

5人に一人が過労死ラインの働き方をやめ
教員の未配置は定数通りの採用で解消を
横浜市の中学校では、36人以上のクラスが全体の58.7%、教師の働き方は、月80時間を超える残業が中学校では19.6%で、5人にひとりが過労死ラインを超えています。その上「先生がいない」「教育に穴があく」教員の未配置は、2022年度は162件、2023年度は半年で110件、122日間の未配置もあったと聞いています。教員配置を年度の最初から欠員でスタートすることで、時間とともに産休・育休や病休の代替が見つからない事態が起こっています。教職員が安心して休めない、子どもたちに授業を十分に保障できないなどの問題が深刻化しています。
これで、豊かな教育実践をすすめ、山積みの教育課題に対応できるでしょうか。まず、年度初めから正規の先生をきちんと定数通り採用するという決断が求められています。子どもたち一人ひとりに寄り添える基本をまず整える教育委員会の職責を果たすことを求めます。

教育委員会の機能・機構の大改革で、現場を支えられる存在へ
教育委員会が豊かな教育実践を支援するために、特に3つの大きな問題に取り組む教育委員会の機能・機構についての見直しが必要ではないでしょうか。あまりにも大きな組織は細やかな支援や指導ができなくなっているのではないでしょうか。今回の事案では改めて学校現場だけではなく教育委員会が自分事として研修等に取り組むことの必要性も明らかとなりました。全国一人口の多い区である港北区を見ると小・中・特別支援学校36校を担当する指導主事は4人しかいません。各区に教育事務所を設置するなどの改革が必要ではないでしょうか。是非、人口20万人から40万人くらいの自治体の教育委員会の視察をされるなど足を踏み出していただきたいと思います。

誰もが安心して学べる教育環境、包括的性教育の充実、開かれた教科書採択に
加えて、いくつかの課題について要望いたします。横浜市において外国につながる子どもたち、経済的な困窮の下にある子どもたちへの教育の充実を進めていくことを求めます。またLGBTQなど性的少数者に対する理解啓発や包括的性教育の推進についても、まだまだ課題となっています。差別や偏見のない学びの環境を築いてください。誰もが安心して学ぶことができるよう、学校現場こそが虐待や貧困、ヤングケアラーなど、家庭の中で苦しむ子どもたちや保護者に寄り添える場所として機能できるようSSWやSCの配置を格段に増やすことが必要です。
今年の夏には、中学校の教科書採択が行われる予定です。教科書取扱審議会に教科書調査員が置かれるだけでは、子どもたちの状況に沿った教科書選定を行うには極めて不十分だと考えます。教科書を実際に使う方々がその現場にふさわしい教科書を選べるよう、学校現場の採択への参加の仕方などを工夫して、各学校・教員の意見が反映される仕組みとなるよう求めます。また、教科書採択の教育委員会議は公開性と透明性をもって開催していただきたいと思います。例えば、採択の審議における発言での教科書会社名を出すことへの制限は行わないこと等や、採択においては委員名を明らかにして責任ある採択を行っていただくこと、直接傍聴希望者が全員入れる会場で採択会議を行うなど教育委員会として尽力してください。
教科書展示会については、市民が教科書内容について意見を言う機会をつくり、その市民意見を教育委員全員が読むことができる仕組みの導入をお願いします。

学校調理方式を軸にした中学校給食へ 子どもの個人情報集積化するICT化は慎重に
また、中学校給食の全員制については、学校給食法を名実ともに実行できる栄養が損なわれていないできたてを中学生に提供する計画へと進めていくことを改めて求めます。具体的には半数以上の学校で実施可能な学校調理方式での実施計画を立て、できる学校から順次進めていくことを提案します。
教育のICT化については、「GIGAスクール構想」によって、「教育のICT化」がものすごい勢いで加速しています。現場を見ると子どもたちもついていくのに精いっぱいという状況が見られます。学校教育へのデジタル化推進の中で、子どものデータ連携を推進する規定は、子どもの個人情報が集積され、本人の不利益な情報がデジタルタトゥー(ネット上に消せずに残る負の情報)として将来にわたり影響を及ぼしかねないものです。プライバシー権の侵害やプロファイリング(人物像の推定)、スコアリング(点数化)などによる権利侵害が生じる恐れを高めるものです。慎重な対応を求めます。

子どもが自由に意見を表明し反映される権利の保障 教育の独立性貫く姿勢の堅持を
何より今、必要なのは、子どもを権利の主体として明確に位置付け、子どもが自由に意見を表明しその意見が反映される権利を保障する仕組みをつくっていくことです。子どもたち自身が、「こんな学校にしたい」と提案できる学校、困ったら率直に「勉強が分からない」「いじめがある」と言える学校へ。多様性と包摂性が存分に発揮される横浜の教育へと前に進めていただきたいと思います。
今回の議会では、政治家からの教育実践への介入と指摘される事態が起き、現場を萎縮させています。教育委員会は日本国憲法や教育基本法に基づいて毅然とした態度で教育への不当な介入を許さない姿勢を貫いていただきたいと思います。
新教育長と新教育委員が加わった教育委員会が、子どもたちの最善の利益を実現するために働かれることを心より期待します。

以上

申し入れ


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