議会での質問・討論(詳細)
2007年12月21日

【2007年第4回定例会】「議案反対討論」河治民夫議員

全ての消防署、消防出張所に救急車を

 私は日本共産党を代表して、今議会に提案された議案のうち5件の議案、そして6件の請願の不採択について、反対の討論を行います。
 最初に、市第63号議案、横浜市救急条例の制定についてです。
 反対の理由は、消防任務に携わっている職員や消防車が救急業務を兼務することにより、本来の任務である消防力が低下することです。傷病者の重症度によって出場させる隊員数などを弾力的に活用するトリアージそのものは一定評価できますが、アンダートリアージにならないよう、細心の注意を払い、常に改善していくことを強く要望します。
 我が党は、増大する救急需要を直視するなら、全ての消防署、消防出張所に救急車を配置すべきと主張してきましたが、救急車は現有数のままです。トリアージにより救急体制は強化される一方、突如として起きる火災に備えて待機している消防車や消防署員が救急業務を兼務することは、消防力の低下につながり、さらに、消防署員の任務負担も増大します。本来の消防力が消防任務から離れても、消防力の低下を素直に認めようとしない市長の態度は問題です。

 次に、市第71号議案、横浜市消防本部及び消防署の設置等に関する条例の一部改正についてです。
 反対の理由は、消防技術や設備の向上を理由に、8か所の消防署所を削減することです。これは、安全管理局が今年1月に制定した「横浜型消防力の再編計画」の具体化の第1号です。
 国の整備指針では、ポンプ自動車が出動し現場までの到着を4.5分、放水準備時間を2分、合計6.5分を出動から放水までの時間と定めています。国の整備指針の逐条問答集では、消防ポンプ自動車の「走行限界時間」を4.5分とし、それ以内に到着できるエリア、つまり「署所担当面積」から署所数を算定すると解説しています。ところが本市再編計画では、消防隊員の能力向上や消防ポンプ自動車の水槽車による即消化体制などを理由に、放水準備時間を国基準より30秒短い1.5分と定める一方で、ポンプ自動車の出動から到着までの時間を国基準より30秒長い5分とし、「署所担当面積」を広げています。消防技術や設備の向上は市民の生命や財産を守ることの強化にこそ結び付けるべきなのに、これらの逆行となる8か所の消防署所の削減は認められません。

 次は、市第72号議案、横浜市立高等学校授業料等徴収条例の一部改正についてです。
 これは市立高等学校の授業料を値上げするもので、国の基準が上がったからといって、安易に本市の授業料を値上げすることに賛成できません。
 改正案は、横浜市立高校の授業料を、2008年4月から、全日制課程と横浜商業高校別科の理容科・美容科では3600円値上げして11万8800円に、定時制課程では1200円値上げして、3万2400円にしようとするものです。
 雇用破壊や賃金切り下げなどで保護者の間に貧困と格差が益々広がっており、子どもの教育格差にもつながっています。教育費の保護者負担がこれ以上大きくなることは、子どもの教育を受ける権利が制限されることにつながるものです。本市の独自の判断で現行の授業料に据え置くべきです。

 次は、市第81号議案、野毛山・金沢動物園の指定管理者の指定についてです。
 反対の理由の第1は、動物園の指定管理期間が短いことです。動物園の4つの機能である娯楽、種の保存、教育、調査研究の役割を果たすには、動物飼育の技術や情報などの蓄積・継承が重要です。そのためには一定期間が必要であり、上野動物園での指定管理期間は10年です。しかし、本議案では3つの市立動物園を一括してひとつの指定管理者に指定することにし、横浜動物園ズーラシアの指定管理者である「緑の協会」のズーラシア管理期間の残り3年間を指定管理期間としています。今後とも引き続き緑の協会が指定管理者となる保障はなく、動物園としての機能が果たせるか疑問です。
 第2は、拙速すぎる金沢動物園の指定管理者の決定です。金沢動物園では今後再生構想が検討されるとのことですが、再生構想が決まった後に管理者を決めるべきです。
 野毛山動物園のネーミングライツについても一言いたします。これまで市民から公の施設として慣れ親しまれてきた「野毛山動物園」が、応募企業の私的施設として受け止められかねません。

 次は、市第84号議案、一般会計補正予算のマリンタワー再生事業に関してです。
 反対の理由の第1は、工事費の見積りがあまりにもずさんなことです。工期延長の理由として、市長は実施設計内容の確定や高層部の耐震補強施行箇所が増加したことなどをあげていますが、これだけの設計変更を行い、工期が4か月も延びても、工事費の増加が一切ないのは、どう考えても不可解です。
 次に、事業者がこの事業に適切かどうかという問題です。事業者として選ばれたリスト株式会社は1991年に設立された不動産会社で、上大岡のショッピングセンターの運営を行っていますが、観光集客施設のノウハウは持っておらず、本事業のための企画力や人材の不足は明らかです。
 さらに、事業者選定に関わる「政治とカネ」の問題です。事業者であるリスト株式会社の社長とその妻は、2006年3月に中田市長の政治資金管理団体に限度額150万円をそれぞれ献金、同年4月に市長選挙、11月に事業者の公募、2007年3月に優先交渉権者がリスト株式会社に決定、そして6月に同社が事業者として決ったものです。
 また、事業者の構成員の一人である横浜エフエム放送株式会社の社長は、中田市長を支えるトップとも言われる藤木幸夫(ゆきお)氏です。はたして事業者選定が公平公正に行われたのか、疑惑は一層増すばかりです。

 次は、請願についてです。
 請願第34号及び第35号は、保育予算の充実と公立保育所の民営化の中止を求めるものです。2006年度の民間保育所への大幅な補助金の削減が人件費にしわ寄せされ、「保育に余裕がなくなった」など、保育士に対する保護者の信頼に支障をきたしています。
 横浜の乳児保育を担ってきた横浜保育室では、所得に応じた保育料の規定がなく、一人当たりの保育料は平均で5万4000円にもなっています。1万円の減免で一部軽減されたとはいえ、収入の少ない保護者にとって負担は大きく、子どもをあずけるのをやめざるを得ない事例もでています。家庭保育福祉員制度の完全複数保育も含め、行き届いた保育のため、保育予算の充実は当然です。
 大阪・大東市の市立保育所の廃止・民営化について、最高裁は11月15日、保護者と市双方の上告を却下したため、市の配慮不足を認めた二審が確定しました。二審判決では、「児童が心理的に不安になるのを防止し、保護者の懸念や不安を軽減する義務があった」「引継ぎ期間を少なくとも1年程度設定するなどの配慮をする義務があった」と指摘しています。
 そもそも保育所の民営化は、保育士の総入れ替えとなり、子どもにとって環境の激変を伴うことは避けられません。本市においても「引継ぎ・共同保育」は不十分なものです。裁判結果にも学び、民営化は中止すべきです。

 次に、請願第36号は、学童保育の改善を求めるものです。
 学童保育は、共働き家庭や一人親家庭の増加による子ども達の放課後生活の場として、また、この間の社会変化で、子どもたちの放課後の安心・安全や、学校教育を補完する補修学習など、役割も多様化しています。
 ところが、学童保育の実態は、本来の施策が立ち遅れ、平均で放課後キッズの3倍近い高額な保育料、劣悪な施設、対象児童の年齢制限、不安定な労働条件で働く指導員など、課題が山積しています。今回の請願は、こうした課題を抜本的に解決してほしいとするものです。
 特に、「委託方式」から「補助方式」の変更で運営費が削減され、おやつ費用の削減、行事費の参加者負担、2人目3人目の保育料割引の中止、指導員の休暇の削減など、保護者や指導員の負担増や保育の質の低下にもつながっており、運営さえ危ぶまれる状況です。「現状でよし」とする自民・民主・公明・民主ヨコハマ会は、改善を求めた39万6701筆もの署名を真摯に受け止め、市民の願いに答えるべきです。

 請願第38号は、ゆきとどいた教育実現のための条件整備についてです。本市の教育費は決算額で、2002年から5年間で232億円も減っています。月刊誌プレジデントファミリー11月号は「公立中学生一人当たりの学校運営費、『東京都港区117万円』『横浜市7万5000円』その差、何と16倍!」と報じています。
 今常任委員会でも、財政難を理由に市民要求の実現に否定的な教育長の態度は厳しく批判されました。
 教職員の配置や校舎新設、教室にエアコン設置などの教育条件整備は、子どもたちにゆきとどいた教育を保障し、人間的成長を支援する学校に無くてはならないもので、これらを求めた請願は当然、採択すべきです。

 次は、請願第28号、小港橋バス停留所の原状回復についてです。
 かつて設置されていた、上屋付バス停に取り付けられた広告掲示板が視界をさえぎり、事故が起こったために、上屋付バス停がまるごと撤去されました。そこで住民は雨風を防ぐ上屋付バス停を求めているもので、これは当然の要求です。

 次は、請願第37号、家庭ごみの収集回数の維持に関してです。
 本市は来年2月から現在の週3回から2回に、7月・8月は従来どおり3回に変更するとしています。現在の週3回から2回に削減することにより、収集費用が年間3億8000万円削減できるとのことです。一方、分別収集による資源化で年間19億円の収入があるとしています。多くの市民や自治会等から「G30の目的は収集回数を減らすことだったのか」「納得できない」、また「6月と9月も3回にしてほしい」など反対意見が多数寄せられています。市民の協力なくして、ごみの分別・減量化はできません。十分な説明も合意形成もないまま進めるべきでありません。
 以上で討論を終わります。


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