市政ニュース ・ 視察報告
2021年12月28日

選択制デリバリー方式から全員喫食の中学校給食に切り替えた大阪市、動き出した堺市を視察

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日本共産党横浜市議団は24日、大阪市を訪れ、中学校給食について視察を行いました。あらき由美子団長、白井まさ子副団長、宇佐美さやか議員と政務活動員2人が参加。大阪市役所の教育委員会事務局三島賢慶課長、川村晃子課長代理らが対応しました。

大阪市の中学校給食は、2012年9月から家庭から持参する弁当との選択制によるデリバリ―弁当方式を段階的に実施し、2013年9月に全校実施しました。2014年2月には選択制ではなく「全員喫食」にする方針を決定し、2016年2月には、デリバリー弁当方式ではなく「学校調理方式(自校調理方式・親子方式)」にする方針を決定し、順次移行を開始。2019年8月にすべての中学校で学校調理方式による全員喫食への移行が完了しました。
なお、学校調理方式への移行に伴い、移行までの間は家庭弁当とのデリバリー方式の給食を選択制により実施していました。

選択制のデリバリー弁当方式の給食から、全員喫食に舵を切った理由について三島課長は、選択制のデリバリー給食を実施していた期間に、保護者・生徒に行ったアンケートで、家庭弁当を持ってきていない生徒が一定数いること、給食を選択せずに市販のパンやおにぎりといった簡易な食事で済ませている生徒が一定数いることが明らかになった。また、多数の保護者が全員喫食を希望していることも分かった。これらを踏まえて、生徒が、正しい食習慣を身に着け、栄養バランスのある食事をとる必要性の観点から全校で全員喫食を導入することを決めたと説明しました。

全員喫食導入後に、教育的な効果を感じたこととして、行事食のお雑煮を提供した際に、3年生の生徒が「(お雑煮を食べるのは)人生で3回目だと思う」と言っていたことが印象に残っていると話しました。お雑煮を食べられない家庭事情もあることを実感した、全員喫食による給食実施は、食文化を多彩な食材を通して学ぶことができると説明しました。また、デリバリー弁当から「学校調理方式」に代わり、保護者や生徒からは、おいしいという声もとどいていて、残食率もゼロに近くなったと紹介しました。

大阪では、少子化の影響で、小学校の給食室でつくれる調理枠に余裕があったため、小学校の給食室で調理して、近隣の中学校に運ぶ「親子方式」を主に取り入れたと話しました。

大阪市役所前大阪市ヒアリング

同日、選択制のデリバリー方式の中学校給食から全員喫食の給食に移行する方針を決定している堺市も視察しました。堺市の教育委員会東孝彦参事、熊田典子主幹(管理栄養士)が対応しました。

堺市では、家庭弁当持参を基本としながら2012年度から、弁当持参できない生徒に向けて「ランチサポート事業(業者弁当・非給食)」を全校実施し、2016年からは選択制デリバリー弁当式による給食を実施。2020年3月に、選択制から全員喫食制へ移行することを決定しました。その実施方法は、給食センター方式としました。現在、2025年稼働予定の給食センターPFI(民間)方式による全員喫食制の中学校給食の実施にむけ、計画が進行中です。

堺市の東参事は、選択制から全員喫食に舵を切った背景について、2019年の市長選で全員喫食の給食を公約した市長が当選したことで動き始めた。そして、過去に堺市では給食由来の食中毒が起きていることから、とにかく「安心安全」は外せないテーマ。一元管理できるセンター方式が望ましいという結論にいたった。学校関係者、保護者からは「やるからには、早くやってほしい」という声が多いと説明しました。また、全員喫食に望める教育的効果について、「食育に関する指導は、人生100年のための指導だ。大人になってからも食事の栄養バランスを見直すなど、行動変容のきっかけになれば良い。若い先生も多くなっている。だからこそみんなで食べる給食は教師、生徒の共通の教材となるのではないか」と話しました。

堺市役所前堺市ヒアリング

まとめ

みんなが食べられる中学校給食は民意
横浜市は市立中学校で2021年4月から選択制のデリバリー給食をスタートし、その喫食率は全市平均(2021年12月分)で20.7%です。市長は、9月の本会議での所信表明で、中学校給食について「中学生に満足してもらえる給食を提供する。その目標を達成するために、中学校給食の全員実施に向けて、取組を進める」として、現行の方式を全員制に移行する意思を表明されました。一方、議会の最大多数会派の自民党と第3会派の公明党は、「現在の選択制が早期にできる最善の方法」・「一部の声で安易に方針転換すべきでない」・「全員喫食のための財源をどこから捻出するのか」(自民)、「現在の選択制はアンケート結果に基づいて採択されたもの」「デリバリー型の給食を発展させていくのが最適な手法」(公明)と、市長とは対極の立場にたっており、全員喫食実施の道のりは平たんではありません。しかし、全員喫食への移行は民意であり、市民の多数が支持しています。住民を代表する議会が本来の役割を果たす立場に立つ限り、民意をむげにはできないはずです。
大阪市は、中学校給食の実施は、横浜と同じように、選択制のデリバリー給食からスタート(2012年度開始13年度に全校展開しましたが)、喫食率は上がらず、毎年実施の保護者・生徒などへのアンケート結果にもとづき13年度内に全員喫食導入を決断し、経年で実施。しかし、高い残食率(20%余)が課題として新たに浮上し、その解決策としてモデル実施の実証的成果を踏まえて自校調理方式、親子方式という学校調理方式導入を2015年度末に決定。以降経年で移行し2019年度で全校展開を完了。この経過は横浜市でも学ぶ点が多くありました。とくに中学校給食スタート時からアンケートを実施し、どうすれば多くの生徒・保護者に喜ばれる給食にできるのかを探求していることです。また、試行でその成果を確認したうえで実施していることも頷けました。そして結果として親子方式が大半を占めたものの、自校方式を可能性の第一番として追求したこと、学校調理方式にこだわり、親の小学校から中学校に運ぶ方式以外の方式を編み出したことも参考にできる点です。この執念ともいえるこだわりには脱帽です。横浜市もこの執念は共有しなければならないと思いました。
堺市では、なぜ全員喫食でなければならないのか、全員喫食をやるならどんな方法でやるのか、管理栄養士を中心に深ぼりの論議がされています。横浜市でも同様のことが必要であり、これからの課題として団としてもなお一層責任ある対応が求められていることを痛感。
この視察の成果を議会論戦で活かし、世論と運動の広がりに役立てる思いを強くしているところです。

 
日本共産党横浜市議団 団長あらき由美子


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