視察報告
2024年3月4日

【視察報告】地域公共交通ネットワークに大きく貢献する 「武蔵野市ムーバス」を視察

市議団は、2023年11月21日、武蔵野市が事業主体となり民間バス会社に運行を依頼して走らせている一般乗り合い小型バス「ムーバス」の視察を古谷やすひこ・白井まさ子・みわ智恵美・宇佐美さやか・大和田あきおの議員5人で行いました。

 

【視察の目的】
山中竹春市長の公約には交通課題の解消を進めるために「地域交通を充実」とあります。山坂が多い横浜では地域バスを求める声も多く、交通不便地域の住民の移動の確保・社会参加促進のためにも、また、新住民にとっても暮らしやすい街横浜とするためにも、コミュニティバスを含めた市が責任をもって市民の「足」を確保する施策を進める必要があります。施策拡充に向けて、コミュニティバスの先駆けとして全国で知られる「武蔵野市ムーバス」を視察しました。

【視察行程】
①    武蔵野市役所にて都市整備部交通企画課
栗林剛課長ら、3人により説明を受ける
②    同行していただき、市議団も実際にムーバスに乗車

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出典写真:武蔵野市役所HP 上:ムーバス車両 下:武蔵野市役所

【ムーバスの概要】
武蔵野市は新宿都庁より西に12㎞にあり、人口14万8000人、面積11k㎡、人口密度が全国2番目の人口過密都市。公共交通ネットワークは、鉄道が3駅(吉祥寺駅・三鷹駅・武蔵境駅)、路線バスが民間バス事業者4社、タクシー、福祉交通に加えて、3駅を起終点としたコミュニティバスのムーバスが運行。
ムーバスは1995年に行政主導のコミュニティバス(廃止代替バスや福祉バスではない)として全国に先駆けて運行を開始し、2007年までに市内3駅すべてを起終点とする7路線9ルートまで順次拡大。内2路線は小金井市・三鷹市との共同運行。現在、地域で路線バスを運行している2社にムーバスの運行を委託し小型バス38台(予備車含む)が運行中。
運行協定により、バス車両はバス会社により購入し減価償却費として運行経費に計上、バス停の維持管理、交通安全対策や歩行者等交通混雑路線の交通整理員を市が委託、事故対応はすべての責務を運行会社が負う。

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【4つのコンセプト】
①    バス交通空白地域(バス停から300m以遠の地域)・バス不便地域(バス停から300m以内ではあるがバスの便数が少ない地域)を解消する、一般バスと重複しないルートで一般バスの不便さを埋める、短距離交通バスで、駅とできるだけ短時間で結ぶ。路線延長は2.7㎞から5.2㎞、便数平日29から63。小型バスで細街路を通る。
②高齢者や子ども連れなどすべての方が気軽に利用できるよう、ワンコイン100円というシンプルでわかりやすい料金、200メートルと短いバス停間隔。
③地域が育てるとして、イニシャルコストは市、ランニングコストは利用者が負担、足りない部分は税で支える。
④武蔵野市の地域公共交通ネットワークに貢献するバスとして、自家用車から公共交通機関への乗り換え促進、駅中心部の交通混雑緩和、路線バス・タクシー・福祉交通との連携と役割分担、としています。

 

多面的な効果があることから、運行経費に補助金を投入
大変参考になったのが、コンセプトの②と③です。②すべての方が気軽に利用できるバスとして、金額の負担感、支払いの手間の負担感を軽くするという考え方で、運賃をワンコイン100円としていることです。
また、③ランニングコストは利用者が運賃を負担、足りない部分は税で支えるという考え方についてです。
運行収支が赤字の場合は赤字分を市が補填、黒字の場合は黒字分の2分の1をバス会社より市へ寄付される規定。足りない部分を赤字とみるのではなく必要経費とみているそうです。
ムーバスの運行収支は、路線が増えるごとに収入・経費が増加し、7路線9ルートの運行開始以降、乗客数は年間260~270万人、収支(=補助金)は6000万円前後で推移してきたが、コロナ禍で乗客数が減り補助金額が増加、2019年度は約7700万円・2020年度は約1億6000万円・2021年度は約9000万円・2022年度は約1億800万円。9ルートのうち8ルートに補助金。収支がプラスなのは、武蔵境駅を起終点とする5号路線(境西循環)の1ルートのみで、距離が短く、渋滞が発生しにくく、大学生の利用が多いとのこと。
補助金支出の考え方として、次のように示されました。経費のうち人件費が6割で、ここを減らすことは難しい。ムーバス運行は外出を促す効果があり、出かければ要介護のリスクが減る、ムーバス運行がないと別部門での支出を要することになり、ムーバスを走らせるほうがより効果がある。近じかムーバスで地域公共交通のクロスセクター効果を算出したいとし、クロスセクター効果「地域公共交通 赤字=廃止でいいの?」(国土交通省近畿運輸局作成資料)を紹介されました。国土交通省近畿運輸局HPには、クロスセクター効果について次のように示されています。「地域公共交通は、例えば、高齢者の外出機会が増えることで高齢者の健康増進や就労機会が増加し、そのために医療費や社会保障費が削減され、むしろ社会全体としての費用負担が下がるなど、単なる住民の移動手段にとどまらず、医療や福祉の質の向上、産業や観光振興、財政の改善、高齢者等が運転する自家用車の交通事故減少、健康増進、地域コミュニティの強化、まちのブランドイメージ向上、災害時の避難手段の確保など、多面的な外部効果、いわゆる『クロスセクター効果』をもたらす」と。ムーバスのクロスセクター効果の算出が期待されます。

横浜市の取り組み
横浜市では、既存の鉄道、路線バス、地域交通サポート事業による地域住民主体で運行するルートがありますが、コミュニティーバスの運行はありません。2022年度からバスネットワークの維持や地域内の移動手段の確保など、「地域の総合的な移動サービスの確保に向けた検討」の取り組みとして、様々な実証運行が行われています。これらのうち、運行経費への補助は、路線バスの13路線に行われており、地域交通サポート事業では車両確保への補助金はありますが、運行経費への補助はありません。市議団として、運行経費への補助を求めてきましたが実現しておらず、ルート増は限定的です。ムーバスの「運行収支に赤字が出た場合、市が補助金で補填する」考え方は、大変参考になりました。

 

ムーバスに乗って吉祥寺駅へ
武蔵野市役所からの帰りに、ムーバスに乗って駅へ向かうにあたって、ルート2吉祥寺北西循環の利用を案内していただきました。16時過ぎに小学校の通学路を下校中の子どもたちと並んで歩き、33番の扶桑通りバス停から乗車。住宅街の中の大変道幅の狭い一方通行の道路ではヒヤヒヤしましたが、安全運転で運行されていました。沿道のおしゃれなお店に目を奪われながら0番の吉祥寺駅北口バス停に到着し下車。座席は埋まって立つ方もいましたが込み合うほどの乗客数ではありませんでした。車内で貸出用の傘の用意にはほっこりしながら、小学生の書いた運転手募集のポスターを見て、乗務員の確保の難しさも実感し、乗務員の処遇改善など国の施策の改善も求められるところです。横浜市での地域交通の充実に向けた提案に今回の視察を生かしていきます。ムーバスmove-usのネーミングに込められた思い「われわれを・・・・する気にさせる、行動させる」を巡らせました。

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