視察報告
2023年8月1日

【視察報告】補聴器購入費助成を 先を行く三鷹市を視察

7月25日、日本共産党横浜市議団(5人+政務活動員3人)は、東京26市の中で最初(2022年10月1日)に、補聴器購入助成をスタートさせた東京都三鷹市を視察しました。

【視察行程】

①三鷹市役所にて担当当局からレクチャー

②日本共産党三鷹市議団と懇談

三鷹市補聴器購入費助成事業の概要(三鷹市HP)

【特徴】

①対象年齢を18歳以上としている。(65歳以上としている自治体が多い)

②「補聴器相談医※1」「認定補聴器専門店※2」を確立している

※1 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会より認定を受けた耳鼻咽喉科医師

※2 認定補聴器技能者が常勤し、補聴器相談医と連携して補聴器の適正な販売を行う店舗

【三鷹市役所でのレクチャー・質疑応答】

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対応:三鷹市健康福祉部高齢者支援課の皆様

質問)制度策定までの議会での議論、担当局内の検討の特徴

回答)2022年度の当初予算で事業費が示された時には、どの会派からも特に反対の意見は出なかった。その後の担当常任委員会で制度の対象範囲などの検討が行われた。

質問)助成申請者数と申請受理者数について

回答)事業開始の2022年10月からの半年間で182人が申請し166人が受理された。受理されなかった方は、利用対象の条件を満たしていない方。

質問)制度利用の手順の1~6に要する実際の時間について

回答)一番早かった方の例

10月5日 申請

10月7日 「医師意見書」記入用紙を市役所が郵送

10月11日 補聴器相談医を受診、作成された「医師意見書(検査結果含む)」を市役所に提出

10月21日 助成金交付決定通知書を市役所が発行し郵送。

10月27日 認定補聴器専門店にて購入

→申請者本人のペースによるので、申請から購入までの期間は異なる。

質問)満18歳以上、本人の合計所得金額210万円未満とした理由について

回答)障害者手帳を持っていない18歳以上の難聴者を支援する制度が無かったため。

210万円未満としたのは、市長より「非課税世帯」で区切らない線引きを指示されたこともあって、介護保険の7段階と同じものにした。65歳以上の80%をカバーできる。

質問)補聴器本体購入費用の二分の一の額(上限額4万円)の根拠について

回答)補聴器は、メンテナンスしながら長く使うものなので、費用の半分は自己負担にした。制度設計をしている時に、価格の安いもので8万円があったので、その半分の4万円を上限とした。

質問)制度対象条件に購入前の申請とした理由について

回答)助成対象が決まっているので、対象条件をクリアしてるのかどうかご本人に確認してもらうために事前申請としている。

質問)感じている課題点や市民意見

回答)補聴器のメンテナンスやレンタル・リースにも助成をしてほしい。制度がまだまだ知られていない。助成額の増額をしてほしいなどの声が届いている。必要に応じて検討していく。

質問)制度策定時、何人程度の申請を予想していたか。

回答)280人程度を予想し予算をつけた。

質問)東京都26市の中で最初に助成制度をつくった。周りにないものをやる決断できたのはなぜか。

回答)三鷹市行政は、コミュニティ行政を掲げている。高齢者や聴力に課題を抱えている方がいきいきと暮らし活躍できる地域を目指している。そのためには、認識の核である聴力への支援の必要性を感じていた。そういった姿勢があったと思う。

【日本共産党三鷹市議団との懇談】

三鷹市議団の(写真左から)栗原けんじ団長、前田まい議員、柴野あすか議員大城みゆき団幹事長と懇談しました。

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【補聴器購入助成制度創設のエピソード】

①市民アンケートなどで高齢者の難聴と補聴器の購入費が高額すぎるという問題があがるようになる。

②党都議団が調査・議会質問を行っており、都の包括補助費が使えることが分かった。

③柏市で超党派の条例提案も参考にし、参考にして共産党しての2020年12月議会で条例提案を行った。

④2021年2月の厚生委員会で、「時期尚早」など理由に自民党・公明党によって否決される。

⑤2021年9月 年金者組合で学習会開催

⑥2021年11月 年金者組合と生活と健康を守る会連名で市長宛の要望書を提出

⑦2022年3月、予算案に盛り込まれる。

【党三鷹市議団が議会で主張した購入助成の必要性について】

・70歳代男性の23.7%、女性10.6%、80代男性の36.5%、女性の28.8%の人が難聴と言われている。

・話が聞き取れないため、ちぐはぐに答え、認知症と間違えられる

・聞こえないため、耳を使うイベント(講演会)などに出かける機会が少なくなり、認知症のリスクが高まる。

・難聴者の14.4%しか補聴器を利用していない。一般社団法人「日本補聴器工業会」調査より

・厚労省の認知症施策推進大綱でも難聴は認知症の危険性を高める可能性がある「危険因子」の一つとされている。

【市民からの反応】

制度ができて良かったという声が届いている。

ただ、補聴器は片耳平均15万円と高額なので、助成上限4万円では足りない。購入を躊躇してしまうという声もある。引き続き拡充を求めていきたい。

資料:補聴器購入費助成の実現の経緯(党三鷹市議団作成資料).pdf

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【視察を終えて(代表)】

大和田あきお市議 健康福祉・医療局常任委員 戸塚区選出

これまで戸塚区を中心に、赤旗読者、後援会員、ニュース読者、支援者を訪問し、横浜市政や国政への市民要望を伺ってきました。中学校給食の改善や子どもの医療費無償化とともに、どこでも聞かれた切実な声は、加齢性難聴者への支援として補聴器購入の際に助成をしてほしいという要望です。

4月の横浜市会議員選挙では、公約のひとつに補聴器購入の助成制度実現を掲げ、当選後、その実現に向けた方向性について考えていたところ、日本共産党横浜市議団として、東京26市の中で最初に補聴器購入助成をスタートさせた東京都三鷹市を視察することになり、横浜市でどう実現していくか、その方策について展望を得る機会として参加しました。

三鷹市では、2022年10月から、18歳以上を対象として補聴器購入助成制度が実現しています。党三鷹市議団は、議案提出権を活用して市議会に補聴器助成条例案を提出し、否決されても、全日本年金者組合などと連帯し、住民自治を実践しながら助成制度を実現してきました。三鷹市での補聴器購入助成の実現への取り組みは、党三鷹市議団と市民とのまさに協力共同の成果であると言えます。

三鷹市の職員のかたは、補聴器購入の助成制度が実現し、高齢者を含む18歳以上の市民や聴力の障害を抱えている人たちが毎日の暮らしでいきいきと活躍できる三鷹市を目指していると語っていました。この制度ができたことによって、改めて自らの聴力障害に気づき、その改善に向けてとりくむ市民も生まれているということでした。

市民要求を重視したコミュニィティ行政を掲げ、補聴器購入の助成制度を三鷹市政の誇りのように語る職員のお話に、地方自治体の役割は住民の福祉増進にあるという地方自治法の基本理念を実感しました。

古谷やすひこ 党市議団団長

横浜市にも「補聴器を助成してほしい!」実にたくさんの方から、要望が寄せられます。市会への請願なども出されていますがなかなか制度創設に向けての動きになりません。しかし何とかしたいと、制度創設自治体に伺って実践事例を視察してきました。

補聴器助成について、東京でも23区内は先行して進んでいますが、三鷹市は23区外では初めて補聴器助成制度を創設した自治体です。事前に聞いていた話では、三鷹でも横浜と同じように、請願が市会に出されたが否決。しかしその後の市民団体などの粘り強い運動でとうとう実現したとのこと。

視察の冒頭で、当局の方が制度説明をしていただいた際に、最初に認知症対策としてもという言葉があり、これから患者が増え続けて社会的に大問題になる認知症対策の一環としても大きな役割を担っているということも語られました。

今回視察をしてみてあらためて感じた大事なポイントは二つ。一つは要望を届け続ける粘り強い働きかけが年金者組合からあったと。一度否決されても、要望の声を届け続けることが大切なポイント。二つ目は、医師会の耳鼻科の先生方という専門家の意見聴取を進めさせたことで、加齢性難聴の患者さんを治療するにあたって壁となっていることが、高額な補聴器を購入してもらうことだということもわかり、専門家の先生方の声は制度設計にも大きな影響があったとのこと。

また制度創設の条例案を検討するにあたって、他党との折衝の中で三鷹市ではもともと障害の分野では18歳までの補聴器購入に対する補助制度がありました。議論の中で、障害があっても18歳からは制度が途切れてしまう問題点を補正することも必要ではという議論になり、補聴器購入助成制度は18歳からの制度となったことも印象的でした。

視察で学んだことを活かして横浜でも、補聴器購入助成制度の創設に向けて頑張りたいと思います。


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