見解/声明
2024年3月5日

横浜市2024年度予算案についての団長談話

2024 年3月5日

子育て支援など「山中カラー」が出た新年度予算案
一つ一つの内容の改善と、暮らし応援策の拡充求める

日本共産党横浜市会議員団 団長 古谷やすひこ

歓迎できる方向性は応援しつつ内容改善を求め、問題ある施策は見直しを迫る

山中竹春市長が編成した2024年度横浜市予算案(一般財源1兆9156億円)が発表され、市会では2月20日に予算議案への会派代表質問、2月22日には予算関連質問が行われました。26日から3月22日まで局別の予算案を審査する予算特別委員会が開催されています。予算代表質問や予算関連質問などを通じて明らかになった新年度予算の特徴と日本共産党横浜市議団として注目している点、課題点と捉えていることなどをお伝えします。

私達は、山中市長が新年度予算案で示した「子育て支援」や「誰もが自分らしく暮らせるまちづくり」などの方向性については歓迎します。しかし、新規に立ち上げた施策や拡充された事業の一つ一つの内容については、もっと現場の実態にあったものに改善・拡充をしていく必要があると考えます。

また、国民の暮らしより大企業の利益と軍事を優先する自民党政治のもとで、生活に困っている市民の暮らしと営業を支える施策については、規模もメニューもまだまだ足りません。

上瀬谷開発や企業立地助成金など不要不急の大型開発や大企業優遇への財政出動については抜本的に見直しを行い、予算を暮らし応援の施策に厚く振り向けることが必要だと考えます。

横浜市会は86定数のうち自民党35人、公明党15人と自公で過半数以上が占められています。
また、昨年4月の市議選で日本維新の会が議案提案権を持つ8議席を得ていることから、国政の悪影響が横浜市会に多く持ち込まれる厳しい構成になっています。この力関係をはね返し、市民の暮らしを支える市政の更なる前進には、カジノ誘致を止めた圧倒的な市民パワーが必要です。どんな悪政も、道理に立った市民要望と団結の前では、長続きはできません。

私達としても、より良い横浜を求める市民と運動団体などと力を合わせ、横浜市政がもっと前に進むよう力を尽くします。

「出産費用ゼロ」が前進 子育て新施策続々と

山中市長は、今回の予算案で「おやこMore Smile Package」と称して、子育て支援を「経済的支援」「時間的負担の軽減」「親子の快適な居場所の創出」の3つの視点に分けて支援する施策を展開するとしています。関連する新規事業は18件、拡充した施策は4件となります。

市長公約の「出産費ゼロ」ついては、今年度予算では新たに20億5600万円を計上。内容は国における出産育児一時金50万円に、市独自に上限9万円を上乗せ支給するものです。これにより市内の公立病院の出産にかかる基礎的費用を100%カバーできるとしています。子育てしやすい横浜に向けて施策の創設を歓迎します。

ただ、今回の拡充では、公立病院以外の出産施設の基礎的費用を全額ゼロにならない場合もあり、どの出産施設で産んでも基礎的費用も文字通りゼロとなるよう求めました。

市会大会派の自民党はこの施策については「政策がミスマッチ」「分娩費の便乗値上げが起きる危惧がある」などと発言しています。お金の心配なく出産できる社会は市民要望であり、予算の優先順位を上げることは当然です。

保護者負担軽減に向けて

保育所利用の保護者の負担を減らすために、おむつや食事用エプロンなどの持ち物負担の軽減や、使用済み紙おむつの処分費用の助成を新設します。また、「小1の壁」への対策として、夏休み期間中に全学童保育と放課後キッズで昼食提供のモデル実施、小学校始業前の朝の居場所づくりのモデル実施を行うとしています。これらは保護者の要望であり、それに応えようとする姿勢は評価できます。

ただ、保育所や学童保育などで新たに施策を進めるにあたっては、負担軽減や支援が欠かせません。現場の声をよく聞いた施策となるよう要望しています。

他にも、妊産婦・こどもの健康医療相談などが行える「子育て応援サイト・アプリ(仮称)」のリリースや、身近な地区センターで、親子が集える「プレイルーム」に本や本棚、知育玩具等を整備します。その他にも、通学路の安全対策に5億4,000万円を計上。インクルーシブな公園づくりやこどもログハウスのリノベーション、受動喫煙防止対策など子育て環境の充実を図る施策についても、応援しつつ内容の更なる改善・拡充を求めていきます。

学校のバリアフリー化、総合がん対策など

野毛山地域に障害児支援拠点(多機能型拠点)、中央図書館に親子フロアを整備します。
学校のバリアフリー化では、車いす使用等により階段の上り下りが困難な児童生徒が在籍している又は入学予定の学校(30校)に、エレベーターの設置を進めるなど、より良い教育環境に向けた整備を実施します。

また、総合的ながん対策として、45億2,800万円の予算を計上。新たに①子宮頸がん検診HPV検査導入、②遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)検査の一部助成、③65歳時がん検診の無料化・70歳以上の精密検査無料化の準備等を行います。これらは、誰もが安心して暮らせる横浜に向かうものであり、評価します。施策内容の更なる拡充を求めていきます。

脱炭素予算を大幅拡充

脱炭素に関わる施策については、前年度45.5億円から新年度は80.8億円に増額します。
施策の視点を①事業者の行動変容、②市民の行動変容、③市役所の率先行動、④脱炭素イノベーションの4つの柱で推進するとしています。

市民の行動変容では、新たに太陽光発電設備と蓄電池等を設置した場合、補助額を50万円上乗せする省エネ住宅住替え補助を拡充します。また、自治会町内会館の脱炭素化支援、プラスチックごみの分別・リサイクル拡大を行います。

市役所の率先行動では、公共施設の脱炭素化(太陽光発電、LED)を国の目標値を上回るスピードで積極的に推進するとして、814の公共施設に太陽光発電設備の設置する事業を5年前倒しで行います。特に地域防災拠点である小中学校への設置を加速させます。また、区役所の照明をLED100%達成目標も3年前倒しで行うとしています。 

これらは、早期に抜本的な推進が必要な気候危機対策へ、横浜市の取り組みが一歩前進するものと評価していますが、横浜発祥の次世代型太陽光発電の普及拡大などは求められているスピードや規模に比べてあまりに少なすぎる予算であり、更なる引き上げが必要です。

水素大規模拠点等は要注意

また、「脱炭素イノベーション」として水素大規模拠点の形成を行うとしていますが、これは注意が必要です。横浜港で水素とアンモニアを大量輸入し貯蔵するための拠点化計画が動いていますが、原産国で大量の二酸化炭素を排出するグレー水素などを規制する仕組みがない中では、環境保護団体から石炭火力発電の延命策と批判される日本政府のエネルギー戦略に乗るものであり、大都市の横浜市が果たすべき再生可能エネルギーの普及や省エネの促進から遠ざかることにつながるものと考えます。

都心臨海部、横浜駅周辺、関内・関外地区などへの過度な財政出動は見直しを

これまで横浜市は、市会最大会派の自民党と公明党などが主導する、みなとみらい地区や横浜駅周辺への開発、高速道路建設、企業立地助成などに多額の財政出動を行ってきました。市長が変わっても、議会の構成は変わらないため、その路線は引き継がれています。エキサイトよこはま22推進・整備関連事業(横浜駅周辺地域開発)に13億264万円、東高島駅北地区開発には11億4000万円を計上。関内・関外地区活性化推進・整備事業は10億1,350万円を計上。内容は、旧市庁舎街区と横浜公園を接続する歩行者デッキ整備工事、みなと大通り及び横浜文化体育館周辺道路の再整備工事、横浜スタジアムと中華街方面を接続する歩行者デッキ整備検討などです。大企業に多額の助成金を配る企業立地条例は、昨年度より1億円程度増の43億6815万円を計上しています。みなとみらい21地区の民間ビル同士をつなぐ歩行者デッキの新規整備事業は今予算案にはありませんでしたが、計画には残っており注意が必要です。

党市議団は、不要不急の開発については中止や抜本的な見直しを求め、予算は市民生活を支える施策に厚く振り向けるよう注力します。

2027国際園芸博覧会、旧米軍上瀬谷通信施設跡地の開発は過大計画の縮小求める

瀬谷区と旭区にまたがる旧米軍上瀬谷通信施設跡地の一部を使って2027年に開催される国際園芸博覧会(GREEN×EXPO)関連事業に51億547万円を計上します。内容は、広報費に3億4,500万円、会場建設費(320億円)の市負担分の一部10億8,400万円、企業からの寄付を基金に移す協会費負担金34億7,800万円などです。また、新年度中に会場計画の具体化、来場者輸送対策の検討、ボランティア計画の策定を進めるとしています。

山中市長は博覧会を通じて、「気候変動や生物多様性の損失といった、地球規模の環境課題に対する解決策として環境と共生する暮らしや自然と最先端技術が融合したまちづくり等の姿を市民や企業と共有」し、「グリーンイノベーションによる新しい社会の実現を目指し、新しいメッセージを横浜から国内外に発信していく」と強調した博覧会開催の目標については理解できる部分もあります。

しかし問題なのは、開催期間半年の想定有料入場者数1000万人を集めようとするあまり、莫大な費用がかかる輸送手段の新設が必須とされる計画となっていること、園芸博後に同地域で計画されている巨大テーマパーク誘致に向けた大規模土地改変によって、同地域に残されている貴重な緑が破壊されてしまう計画になっていることです。さらに、公費負担が膨らみつづける大阪万博と同じ道を進むようであれば、とても市民の理解は得られません。引き続き、公費負担が膨大に膨らむような事態があった場合は、有料入場者数の大幅縮小を含めた抜本的な計画の見直しを行うよう強く求めていきます。

公共交通の深刻な状況が露わに 
市民の足を守る施策の拡充こそ必要

山中市長が公約に掲げた「地域交通の充実」には市民の大きな期待が寄せられています。新年度予算には「地域の総合的な移動サービス検討費」として2億6,900万円を計上。内容には、既存の「地域交通サポート事業」や実証実験中の「デマンド型交通」などを踏まえて、行政が潜在的な移動ニーズを掘り起こす「プッシュ型」施策への転換の検討が盛り込まれています。また、新たな移動サービスの導入・持続のための支援内容の拡充など公費負担のあり方についても検討するとしています。

しかし、市営バスについては、バスドライバーの働き方改革を進めることを理由に、この4月のダイヤ改正で約300本ものバスを減便するとしています。ドライバーに休養時間を保障する働き方改革は当然ですが、このような大幅な減便を行っては公営交通の責任を果たせるはずがありません。市民の大切な足を守るという視点に立った施策展開こそ必要です。

75歳以上の敬老パス自己負担ゼロについては、今回の予算案には盛り込まれませんでした。しかし、IC化が行われて1年が経ち、一定の利用実績が明らかになってきたことを踏まえ、山中市長は介護予防的な効果も検証するとしています。私達も敬老パスが持つ、健康寿命の延長による医療費抑制などの社会的な効果を検証し、施策を拡充(JR・私鉄でも利用可など)することを求めており、引き続き公約実現に向けて必要な提案を行っていきます。

中学校給食は、学校調理方式を軸にした計画に見直すよう求める

中学校給食については、2026年度からのデリバリー方式による全員喫食に向けて中学校給食推進校の拡充、配膳室の整備を行うとともに、想定喫食率を46%(現36%)にするとしています。

中学校給食をめぐっては、本年度中に、給食調理中の鍋でたばこの吸い殻が発見される事件が発生。市外の工場だったため、横浜市の保健所は立ち入り調査ができませんでした。また、この事故の責任は事業者には求められず、税金で穴埋めされました。さらに、全員給食の製造事業者に参入予定だった事業者が、年末に食中毒事件を起こし、取引事業者から外されました。1万3,000食の給食製造担当でした。事業が始まってから事故が起これば、何十校もの給食がストップになります。

私達は、みんなが食べられる中学校給食には賛成ですが、実施方式のデリバリー弁当方式については、安全対策のためにおかずを急冷して運ぶことから、他都市では生徒の評判が悪く他方式に切り替えている自治体が広がっていること、運搬等に関わるリスクとコストが高いこと、弁当への盛り付けが発生するために調理が深夜からスタートする過酷な労働を強いることから、デリバリー方式が長期固定化する現計画の見直しを強く求めてきました。具体的には、全校一斉スタートにこだわらず、市教委の試算でも半数以上の学校で出来るとした学校調理方式を、できる学校から始めること、また、次善策として、新しく建てる市内給食工場を、出来たてから2時間以内に食缶を運ぶ給食センターとして活用し、あたたかい給食実現に向かうことを引き続き求めていきます。

市民の声を聞き届ける役割果たす

子育て応援の施策や脱炭素施策など、「山中カラー」が出た新年度予算案だと受け止めています。市民と力を合わせ、良いものは伸ばし、前市長時代から引きずっている問題のある施策については抜本的な見直しを求めていきます。

私達は、この間、地域に直接出向いて市民の皆さんの声を聞く市民要望懇談会を市内各区で開催。また、市内の市民団体、業界団体と予算案についての懇談を行い、様々な現場からリアルな実態、行政に求められている支援の在り方について、ご意見ご提案を聞いてきました。
その声を直接市政に届け、市民目線で課題解決に進むよう役割発揮に向け力を尽くします。

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