見解/声明
2024年4月1日

2024年第一回定例会を終えて

子育て支援など「山中カラー」出た予算案に賛成 
予算特別委員会では防災強化を前面に論戦

2024年4月1日
日本共産党横浜市議団 団長 古谷やすひこ

1月30日から開催された2024年横浜市会第1回定例会は、3月26日に閉会。山中竹春市長が編成した1兆9,156億円の一般会計予算案は、自民党が提案した出産費用の助成制度を巡る付帯意見を付けて、賛成多数で可決されました。

子育て支援など方向性に賛成し、一つ一つの内容の改善と、暮らし応援策の拡充求める

日本共産党横浜市議団は、今回の予算について、子育て応援の施策や脱炭素施策など「山中カラー」が出た予算案だと受け止めており、「子育て支援」や「誰もが自分らしく暮らせるまちづくり」などの方向性について評価し、予算案に賛成しました。

一方、子育て支援策として新規に立ち上げた施策や拡充された事業の一つ一つの内容については、もっと現場の実態にあったものに改善・拡充をしていく必要があると考えています。また、この4月から市営バスを約290減便することは、公共交通の役割が果たせなくなると指摘し、バス事業の予算拡充と、運転手の担い手不足を招いている労働環境と処遇改善が必要だと主張。その上で、都心臨海部、横浜駅周辺などの不要不急の大型開発や、大企業に多額の助成金を配る企業立地条例などを中止し、市の予算を市民生活を支える施策に厚く振り向けるべきだと提案しました。

特に、過大規模となっている2027国際園芸博覧会や、民間巨大給食工場で調理する弁当を各学校に届ける「デリバリー方式」の全員制中学校給食の現計画は、抜本的な見直しを行うことを求めました。

気候危機対策について、脱炭素に関わる施策が、前年度45.5億円から新年度は80.8億円に増額されました。特徴的な施策は、新たに太陽光発電設備と蓄電池等を設置した場合、補助額を50万円上乗せする省エネ住宅住替え補助の拡充や、814の公共施設に太陽光発電設備の設置を5年前倒しで行うなどです。これらは、横浜市の気候危機対策の取り組みが一歩前進するものと評価しています。しかし、横浜発祥の次世代型太陽光発電の普及拡大などは、求められているスピードや規模に比べてあまりに少なすぎる予算であり、更なる引き上げを求めました。

また、横浜港で水素とアンモニアを大量輸入し貯蔵するための拠点化計画が動いていますが、これは原産国で大量の二酸化炭素を排出するグレー水素などを規制する仕組みがない中では、環境保護団体から「石炭火力発電の延命策」と批判される日本政府のエネルギー戦略に乗るものと考えます。大都市の横浜が集中すべき対策は、再生可能エネルギーの普及や省エネの促進であることを提案しました。

市会最大会派の自民党は、予算代表質問で「我々の主張した新たな財源としてのIRを否定して市長となった以上、当然それに代わる具体的な提案を(中略)市民の皆さんに提示する責務があるはず」と主張。最終日予算案討論では、「良いところは前に進め、至らぬところは厳しく提言も交えて指摘したが、市長から理解と納得がいく答弁は得られなかった」と発言し、出産費用助成についての付帯意見について「内容が進まなければ厳しく追及していく」と述べるなど、「対決トーン」のまま予算案に賛成しました。

中学生のいじめ自殺事件の徹底解明と再発防止を

2020年に市立中学2年生が自死したことについて、市第三者委員会は「いじめが原因」と認定し、学校側の「いじめ防止対策委員会」が機能していなかったことや、教育委員会が “いじめではない”と判断していたことなどの問題について、市会各会派から厳しい追及が相次ぎました。

日本共産党は、教育委員会常任委員会の討議や予算総合審査などの機会を使ってこの問題を追及。これまでもいじめ重大事案が起きるたびに、再発防止策が発表されてきたが、対策が実行されてきたのか第三者視点の点検や確認ができていないことを明らかにし、これでは、ただ対策を「焼き直し」しただけであり、抜本的な改善が必要だと指摘。また、市立小中学校の不登校生徒が8,170人と急増しているが、市教委が把握している「いじめを原因」とした不登校事案は、昨年1件だったことを示し、これは現場に即したものなのかと指摘し、いじめ防止対策推進法が示している正しい認識をもとに実態把握をやり直すよう求めました。

その上で、2度と今回のような悲劇を繰り返さないために、多忙を極める学校現場をフォローする体制強化は必須だと主張。全市で4か所しかない学校教育事務所を区ごとにしていくことや、10校に一人しかいないSSW(スクールソーシャルワーカー)の増員と処遇の改善を行うよう要望。また、いじめが起きない環境整備に向けて、一人ひとりに目が届く少人数学級の推進、通知票の評価を競い合わせる教育ではなく、児童生徒が尊重される学校づくりとするよう求めました。

3月26日に開催された市会運営委員会(5人以上の交渉会派で構成)で、山中市長に対し、学校と市教育委員会の対応過程に関する調査や関係者の処分、いじめ自死を二度とおこさない学校と教育委員会をつくりあげることを求める申入れを運営委員会の全会一致で採択し、28日に提出しました。

バス便290もの減便…公営交通を守るためにはドライバーの労働環境・処遇改善は待ったなし

党市議団の指摘に市民の関心集まる

山中市長が掲げる「地域交通の充実」には市民の大きな期待が寄せられています。新年度予算には「地域の総合的な移動サービス検討費」として2億6,900万円を計上。内容には、既存の「地域交通サポート事業」や実証実験中の「デマンド型交通」などを踏まえて、行政が潜在的な移動ニーズを掘り起こす「プッシュ型」施策への転換の検討が盛り込まれています。また、新たな移動サービスの導入・持続のための支援内容の拡充など公費負担のあり方についても検討するとしています。

一方で、市営バスについては、バスドライバーの働き方改革を進めることを理由に、この4月のダイヤ改正で約290本ものバスを減便するとしています。ドライバーの長時間労働を規制する働き方改革は当然ですが、このような大幅な減便を行っては公営交通の責任を果たせるはずがありません。市民の大切な足を守るという視点に立った施策展開こそ必要です。議会でこの問題を指摘。

ネットなどでは多くの関心が寄せられました。「指摘だけではなく対案も示して」という意見も多くありましたが、日本共産党は、市バスの運転手を就職先に選んでもらえるよう処遇改善と労働環境の改善を進めることが必要だと主張。組合から出されている変形労働時間制の見直しや、懲戒などの処分が下された際に、上司と一緒に本人が市役所まで呼び出されて行う「処分式」などをやめるなど職場改善を進めることを提案。その上で、公営交通を守るための市財政からの支援を抑制している、横浜独自の市営バスの営業形態である「改善型公営事業」を見直すことを求めました。

市防災施策の総点検と抜本的な強化を

2月26日から3月22日にかけて開催された新年度予算案を審議する予算特別委員会で、全局で「防災」をテーマに現状をチェックし、必要な改善提案を行いました。明らかになったのは、大地震(元禄型)が来た時に予想される想定被害に見合うだけの「備え」が整っていなことが明らかに。特に被災市民を支える防災拠点・避難所は、能登地震で指摘されているプライバシーの配慮や高齢者・障害者など要支援者の対応計画が後手に回っていて、このまま震災が来れば能登で起きてしまった状況を繰り返すことになると指摘し、改善を求めました。

地域防災拠点を「拠点」にふさわしいものに
全く足りていない福祉避難所

市の459か所の地域防災拠点のうち442か所が小中学校の体育館です。しかし、空調や水、電源やWi-Fi確保などが進んでいません。また、給食室を活用する想定がないことも審議の中で明らかに。地域防災拠点は、避難してきた人だけでなく、周辺地域全体の災害時の拠点であり、支援物資の供給拠点にもなります。そのことを市民に広く告知し、「拠点」に相応しい機能強化を、学校建替えにも合わせて推進することを求めました。

地震大国のイタリアでは、大型キッチンカーが避難所に急行し、温かい食事を提供。また、簡易ベッドと冷暖房機が付いた大型テントが家族ごとに提供されます。日本共産党は、海外の実践に学び、避難所にトイレ、キッチン、ベッドを48時間以内に整えること(TKB48)を提案しています。

横浜市の地域防災拠点には、段ボールなどの間仕切りの整備や、常備している毛布は対応人数に足りていない状況があり、安心して過ごせる避難所へのバージョンアップは待ったなしです。

高齢者や障害のある人の特別な配慮が必要な人たちを災害時に受け入れる「福祉避難所」。能登では多くが開設できず問題になりました。横浜市でも 約17 万人対象のところ1万5,761人分しか確保できていません。このままでは能登と同じ状況になると市側も認めています。 至急、当事者が通いなれたところで福祉避難所の設定を行い、必要数の確保を進めるよう求めました。市は、今後、福祉施設に対して積極的な働きかけを行い、福祉避難所の増加につなげていくことを表明しました。

あらゆる防災施策に女性の視点を 
市民が多く参加するリアルな防災訓練を

市の防災計画を立てる市防災会議の女性比率は現在13%。地域防災拠点の運営委員会の女性比率も低く、ジェンダーの視点を学ぶ研修は、年に2か所の地域にとどまっていることが明らかに。防災施策を錬る場や避難所運営にもっと多くの女性参加を求めました。また、何万人も利用している市民利用施設など、実際の利用者数での避難訓練は行われていません。いざという時に大パニックにならないよう、市民が大勢参加する訓練の実施や、初期消火を行える市民を増やす取り組みを求めました。

他には、浸水(津波・洪水)想定区域内で、電源が地下にある区役所が8か所もある現状(鶴見、神奈川、中、保土ケ谷、磯子、港北、青葉、泉)や、災害対応の車が入れない狭い道が約500キロあること、また、市内の重要な375橋のうち、震災対策が完了していない橋は6か所でその内未着工が3か所あること、9,300kmある市内の水道管の老朽・耐震化は、2022年度で大口径の52%が未着工で、震災時に断水による火災延焼のリスクがあることなどを明らかにし、関連の予算と対応する人員を増やすことなどを要望しました。

身近なところに図書館を

これからの横浜市の図書館像を示めす「図書館ビジョン」について、原案が発表され、市民意見の募集と市会の討議を経て3月27日に策定されました。

ビジョンで示された「あらゆる市民のための図書館」などの「5つの基本方針・取組の方向性」については、市民の声や専門家の意見を取り入れてあり、評価できるものです。問題はこのビジョンに沿った図書館をいかに市民の身近なところに整備するかです。日本共産党は中学校区ごとに図書館をと要望しており、現在の一区一館にとどまらない整備を行うよう求めました。

その上で、地区センターの「図書コーナー」を「図書館分室」にしていくなど、図書館ビジョン実現のフィールドに取り入れることを提案しました。また、新年度予算では、学校図書館司書の勤務時間を一人年5時間増やすなどでの増額がありました。一方で図書館資料費はわずか1,198万円の増であり政令市最低ランクの一人当たり図書館蔵書数を解消するような増額にはなっていないと指摘しました。

学校図書館の拡充については、古くなった本の買いかえなどに使える予算が増えたことを評価しつつ、学校図書館が市の図書館の本を借りるしくみについて、図書館に学校司書が出かけて行って、何十冊もの本を自力で持って帰るという現状を見直し、区にある図書館と学校図書館の物流も含めたネットワーク化を進めることを求めました。

自衛隊へ勝手に個人情報を渡さないで

2021年から、横浜市は、自衛隊員募集のために使われる個人情報(対象年齢になる方の氏名・住所)を、市民に知らせずにタックシールで自衛隊に提供していました。また提供を望まない市民からの「除外申請」すら認めない対応をしていました。

この問題についても予算特別委員会でも追及、2024年度からは除外申請にについて受け付けることと、受付け募集について3月1日の広報よこはまに掲載する対応がとられました。しかし、名簿提供そのものは続けることになっており、市民に黙って提供してきたことは広く知らせていません。自衛隊に提供する目的で集めたものではない個人情報を勝手に渡すことは、プライバシー権の侵害であり、行政としてやってはいけないことです。引き続き提供そのものをやめるよう求めていきます。

自民党政治の裏金金権腐敗で進む政治不信の払拭に向け、役割を果たす

自民党の派閥と議員による裏金事件を巡って、深刻な政治不信が起きています。「裏金を受領した議員には遅滞上乗せで課税し、議員辞職させるべき」などの怒りの声が報道されています。政治不信の根を絶つ本気の改革を行わなければ信頼を取り戻すことはできません。金権腐敗政治の根を断つためには、企業・団体による政治資金パーティー券購入含め、企業・団体献金の全面禁止が必要です。裏金づくりは誰がこのシステムをつくり育て活用したのか、裏金は何に使われたのか、全容解明なくして再発防止はありえません。

日本共産党は、企業団体献金も政党助成金も受けとらない政党として、民主政治の根幹である「政治と金」の透明性と公開性を追求し、政治への信頼を取り戻す役割をしっかり果たしていくことを市会本会議場で表明しました。

日本共産党が第一回定例会で反対した議案
現年度議案52件の議案のうち、42件の議案に賛成し、企業立地促進条例の延長、旧上瀬谷通信施設の土地区画整理事業、首都高料金徴収期間の延長、久保山斎場の指定管理導入などの10件の議案に反対しました。
特別会計の国保料・介護料の値上げや上瀬谷や新本牧ふ頭、横浜駅周辺の大型開発、みどり税の延長など7件に反対。また、市職員定数削減など関連議案5件に反対ました。

PDF版はこちらです


新着情報

過去記事一覧

PAGE TOP